GaN(窒化ガリウム)は青色・白色発光ダイオード( LED)や、ブルーレイディスク用の青紫色レーザーダイオード(LD)に不可欠な材料であり、またパワーデバイス用途としても有望な材料です。本技術の開発に着手した当時は、既に青色LEDが実現されていたが、これはサファイアなどの異種基板上に成長した欠陥(転位)の多い結晶を用いたもので、より厳しい条件で動作するLDの実現のためには、欠陥密度が格段に少ないGaN単結晶基板の開発が切望されていた。
本開発では、LDの量産に適用が可能な、直径2インチ以上のサイズで、かつ、基板の全面において欠陥密度が均一に低減されたGaN基板を、安定的に市場へ供給する体制の構築を目指した。GaN基板は、下地となる基板上にGaNの厚膜を結晶成長し、成長後にGaN層だけを剥がしてこれに研磨加工を施すことで得られる。大型で高均一なGaN基板を実現するキー技術として、本開発では、下地とGaNの界面にTiNナノネットと自己形成ボイド(図1参照)による応力緩和構造を導入し、GaN結晶の低転位化(従来比1/1000)とクラックフリーでの剥離を両立する、独自のボイド形成剥離法(Void-Assisted Separation, VAS法)を確立した。また、同時に、量産性に優れた独自のGaN結晶用大型成長炉や、残留加工歪みの少ない表面研磨技術を開発した。これらの技術成果により、2インチ径以上という大型サイズで、ウエハ全面が均一に低欠陥化されたGaN単結晶基板を、世界で始めて量産し、実用化に成功した。
本開発で得られたGaN基板は、青紫色LD主要メーカーに納入し、ブルーレイディスクの普及に大きく貢献している。今後も、3D映像コンテンツの普及に伴う記録メディアの大容量化が予想され、本技術が果す役割は益々大きくなるものと期待される。さらに将来的には、高効率LEDやパワーデバイスなどの環境性デバイスの実現・普及を通じて地球環境保護にも大きく貢献できると期待される。
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