市村産業賞

第45回 市村産業賞 功績賞 -01

循環型社会を創生する家電プラスチックの高度選別回収・再生技術

技術開発者

三菱電機株式会社 先端技術総合研究所
環境・分析評価技術部 部長  椋田 宗明

技術開発者

同社 リビング・デジタルメディア事業本部
グループマネージャー 小笠原 忍

技術開発者

同社 生産技術センター 量産化技術推進部
グループマネージャー 塚ア  岳

開発業績の概要

 近年、環境問題や省資源問題を背景とする家電リサイクル法の施行に先立ち、使用済み製品の再資源化と再利用による資源循環を、資源小国であり技術立国である日本が世界をリードして構築すべきモノづくりの一環と位置付け、国内静脈インフラの一角を担うべく、焼却や埋立て処分あるいは海外流出により国内での再資源化が進んでいなかった使用済み家電のプラスチックに対し、国内循環に資する品質と経済性を両立させる高純度大規模回収システムの構築と家電から家電への再利用による自己循環リサイクルの実践を目指した。
 受賞者らは比重差や摩擦帯電などプラスチック固有の物理特性を利用した機械選別プラントを構築し、主要な3種類のプラスチック(PP:ポリプロピレン、PS:ポリスチレン、ABS:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)を99%以上の高純度での大量回収を実現した。さらに独自のX線分析選別を開発し、機械選別と組み合わせて、リサイクル素材の無害化、環境適合化を果たした。また、プラスチックの経年劣化や微量異物残留による性能低下に対し、改質剤の調合と配合による改質技術を開発し、新材と同等の性能のコストを実現する再生素材化を確立した。
 本技術は、人手をかけず製品を丸ごと破砕して得られる大量の混合破砕プラスチックをターゲットに、比重選別や静電選別等の自動機械選別を大規模化し、大量回収による処理コスト削減と高純度回収によるリサイクル素材の高付加価値化の双方を実現したことを特徴とする。さらに、使用済み製品中の環境規制物質(臭素系難燃剤含有プラスチック)に対し、臭素のX線吸収特性に着目した独自のX線分析選別を開発し、回収プラスチック破砕片の全量検査と規制物質の高速検知除去による環境適合化を実現、これにより、家電から家電への自己循環リサイクルを可能にした。創設したプラスチック大規模素材化工場は、国内全回収量の約1/10を担う15,000トン/年の処理能力を有し、従来の手解体による回収率約6%を約70%まで高める。回収プラスチックの一部は改質技術により再生素材化され、冷蔵庫やエアコンへの再利用を実践している。本技術開発とその事業展開は、プラスチックリサイクルの普及拡大、国内定着を牽引していくものと期待される。

図1
図2