市村産業賞

第45回 市村産業賞 功績賞 -02

新世代クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」

技術開発者

マツダ株式会社 パワートレイン開発本部
パワートレイン技術開発部 主幹 寺沢 保幸

技術開発者

同社 同本部 エンジン性能開発部
マネージャー 高松 宏志

技術開発者

同社 同本部 エンジン性能開発部
部長 中井 英二

推  薦 一般社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

 ディーゼルエンジン(DE)は一般的にガソリンエンジンと比べ、燃費や走りの良さ、などが優れている一方、排出ガス(NOx、スス)の汚さ、振動の大きさなどのため、特に日本では普及には至っていなかった。近年排出ガス浄化などの技術開発が進み、国内外の厳しい基準に適合したクリーンディーゼルエンジンが市場に出始めたが、技術面(燃焼)やコスト(特に排出ガスクリーン化)での課題は解決できておらず、お客様にとって魅力的な技術(商品)となり得ていない。また、弊社は基本性能となるエンジンなど内燃機関の更なる効率改善を最重要課題と位置づけており、これら課題を克服し、「すべてのお客様に優れた環境性能をもつディーゼルエンジンを低価格で提供」かつ「他社ディーゼルエンジンを圧倒する走りを実現」するクリーンディーゼルエンジンの開発、普及を目指した。本技術開発では、図1に示すとおり、「低圧縮比」と「高効率過給」をイネーブラーに、燃費改善とNOx低減を高いレベルで両立させている。
 開発技術の特徴は乗用車用DEとして世界一の低圧縮比化と高効率過給で、低圧縮比化は圧縮比を下げ、ピストン上死点での温度を低くし、空気と燃料が十分に混ざり合うようにした。低圧縮比化にあたっては、最大の課題である低温時の着火性改善技術を開発し実用化に至った。高効率過給は、大小のT/Cを使い分けて十分な量の空気を供給することで燃焼時の酸素不足を抑制するもので、低圧縮比との相乗効果でNOxなど低減しつつ、走る歓びと優れた環境性能を高次元で両立させた。
 本開発により高価なNOx後処理システムなしで国内外の排出ガス規制に適合させ、当DE搭載の弊社SUVの車両燃費は18.6km/L (国内JC08モード)を達成した。また、国内の販売実績は2012年以降2.6万台以上となり、DE乗用車市場を新たに創出した。


図1
図2