市村産業賞

第45回 市村産業賞 功績賞 -03

多層シームレスカプセル化技術の開発

技術開発者

森下仁丹株式会社 大阪テクノセンター 研究開発本部
カプセル開発部 主幹 釜口 良誠

技術開発者

同社 CS本部
本部長 大野  徹

技術開発者

同社 大阪テクノセンター 研究開発本部
カプセル開発部  部長 杉本 敬之

開発業績の概要

 生薬を純銀の箔で包んだ「銀粒仁丹」。受賞者らは、この薄膜で包み保護する発想から油性液体フレーバーを継ぎ目のないゼラチン皮膜で包んだシームレスカプセル製造に成功した。更に、水溶性物質のカプセル化や胃で溶けず腸で崩壊する耐酸性シームレスカプセルの開発にも成功、「多層シームレスカプセル化技術」の基盤が完成した。
 本技術での製造原理は油の中で水滴が丸くなる界面張力を利用している。同心多重ノズルの最内側ノズルから内容充填液、その外側ノズルからは内容充填液と相溶性のない膜形成物質液、最外側ノズルから皮膜形成物質液を同時に別途冷却された油性液体中に吐出すると界面張力により多層構造のシームレスカプセルが形成される(図1)。カプセルサイズは粒径0.5mm〜10mmの範囲で調整可能で皮膜材に機能性天然高分子や合成高分子を用いて多様な機能も付与でき、4層カプセルまで量産可能である(表1)。
 本技術は酸化し易い魚油やEPA、DHA等の酸化防止はもとより、微生物や細胞も生きたままカプセル化でき、ビフィズス菌を胃酸から守り生きたまま腸まで届ける耐酸性カプセル「ビフィーナ」を1993年に発売した。また、2層構造シームレスカプセル内に別の2層構造シームレスカプセルを内包する「カプセルinカプセル」にも成功、異なる2種類の充填液を隔離して一つのカプセルに包含できる独創的なシームレスカプセルが世界で初めて可能となった。更にこれらの機能を生かして、従来の食品、医薬品分野以外の応用として「人工種子カプセル」、「シロアリ駆除カプセル」、「レアメタル回収カプセル」他も開発中である。(図2)。

図1
図2
図3