市村産業賞

第45回 市村産業賞 貢献賞 -04

デジタル3D映像の高効率符号化と放送記録技術の開発と実用化

技術開発者

パナソニック株式会社 R&D本部
クラウドソリューションセンター 室長 小塚 雅之

技術開発者 パナソニック ノースアメリカ株式会社
パナソニックハリウッド研究所 所長 柏木 吉一郎
技術開発者 パナソニック株式会社 R&D本部
R&D戦略室 顧問 大嶋 光昭

開発業績の概要

  19世紀の映画の発明以来、立体映画の商用化が試みられたが、普及するには至らなかった。1995年にコンピュータグラフィックスを用いた長編映画が登場し、デジタル処理による理想的な3D映画実現の可能性を見た受賞者らは、世界に先駆けデジタル3D映像信号の符号化、放送、記録技術の開発に着手した。
 デジタル処理された立体映画のリアルな臨場感を民生機器で実現するためには、両眼用のHD映像データを、品質を損なうことなく削減することが課題であった。このため、(1)左眼映像データと、左眼と右眼の差分データとを送るMPEG-4 MVC(Multiview Video Coding)の基本技術を開発(1996年)することによって右眼映像データ量を半減した。また、(2)HD映像の圧縮効率そのものを2倍に高める符号化技術を開発しMPEG-4 AVC(Advanced Video Coding)ハイプロファイルとして規格化した(2004年)。この結果、HD-3D映画を1枚の光ディスクや既存のTV放送帯域で提供可能となった(図1)。さらに、(3) 既存の2D機器では3Dコンテンツが2D映像で見える2D/3Dの2層ファイル構造と(4)2D、3Dコンテンツを識別する基本技術を考案(1996年)、規格化し、既存の2D機器との完全互換が実現した。
 本技術を用いた世界初の3D-DVD再生装置を製作し、1999年ハリウッドの映画会社に提案、さらに、パナソニックハリウッド研究所において映画会社と連携、3D映像の画質向上と標準化活動を進め、2008年には3D映画『アバター』と制作提携を行うとともに、2009年に本技術を基幹部に用いた3D規格の国際標準化(Blu-ray3D規格、HDMI伝送規格:2012年DVB規格化)を実現した。2010年に製品化した世界初のフルHD・3D関連機器(図2)は、民生用3D市場の立ち上がりに大きく貢献した。現在では多くの製品が3D規格に対応するようになり、そのほぼ全てに本技術が採用されている。エンタテインメント分野にとどまらず、医療、教育等の幅広い分野での3Dの活用も広がり、今後のさらなる展開が期待される。

図1
図2