市村産業賞

第45回 市村産業賞 貢献賞 -05

建築物の耐震安全性を実現するデザイン性に優れた鋼管ブレース

技術開発者 JFEシビル株式会社 システム建築事業部
営業推進部 開発グループ グループ長 宮川 和明
技術開発者 同社 同事業部 デバイス営業部
部長 森田 時雄
技術開発者 JFEスチール株式会社 建材センター
建材開発部 主任部員 藤澤 一善
推薦 一般社団法人 日本鉄鋼協会

開発業績の概要

  兵庫県南部地震の人的被害を受けて制定された耐震改修促進法により、1981年以前の旧耐震基準のもとで建設された建物を対象に一般的な鉄骨枠付きH形鋼ブレースによる補強工事が進められたが、開口部の狭小化、使い勝手や美観上の制約、工事中の使用制限、工期の長期化等が指摘された。また、新築建物においては、極大地震時の事業継続性や安全性への配慮から、更なる高耐震化や制振化といった付加機能が求められるようになった。
 受賞者らは、デザイン性に優れ、かつ施工性も良好な耐震補強用、制振構造用のブレースを開発した。ブレース部材には効率的に高軸力に耐える円形鋼管を適用し、接合部もコンパクトなピン接合とすることで美観性に配慮した(図1)。また、座屈補剛機構により耐震性向上を図ると共に、ブレース部材に低降伏点鋼管を用いることで制振ブレースとしても機能する。さらに、建物の外側に耐震補強構面を配置する外付け補強工法により、居ながら施工を実現した(図2)。開発商品を図3に示す。クレビスは引張強さが880N/mm2級の高強度鋼で、標準化により鍛造での量産化を図り、高強度ピン接合部品としてわが国初の国土交通大臣認定を取得した。クレビスと口金の接合にターンバックル機構を採用し、施工性を大幅に向上させた。また、外管補剛型と内管補剛型の2種類の座屈補剛機構は軸力管の横たわみを補剛管が防ぐもので、圧縮時にも座屈しない、優れた構造性能を実現する。さらに、軸力管に低降伏点鋼管を用いることで高い疲労性能を実現し、制振ブレースとしても機能する。ブレース開発に加え、建物外面に鉄骨枠組を配した外付け補強工法を開発し、日本建築総合試験所の性能証明を取得した。1994年の販売開始以来、累計2000件の物件に採用され(ブレース43000本)、その内90%強が耐震改修である。教育施設、官庁施設、病院、事務所ビルおよび集合住宅(図4)など多用途に採用されている他、韓国の小学校や高速道路・橋梁の耐震補強など、海外建築や土木構造物にも適用された。東北地方太平洋沖地震では本開発技術により耐震補強された74件の建物は無被害であった。

図1
図2
図3
図4