市村産業賞

第48回 市村産業賞 貢献賞 -01

高速100G ビット光通信用モジュールの開発と実用化

技術開発者 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 製造統括部 製造技術部
担当部長 古川 博之
技術開発者 同社 同統括部 同部
岩本 昌煕
技術開発者 富士通株式会社 テクノロジ&ものづくり本部
ものづくり技術センター プロセス技術部
部長 野村 進直

開発業績の概要

 近年、スマートデバイスの急速な普及やクラウドコンピューティング、動画配信などのサービス拡大により、通信トラフィックが急激に増加している。急速に拡大する通信トラフィックに対応するためには、最先端の100G光ネットワークの普及が必要不可欠である。しかし、100Gビット伝送では新たにデジタルコヒーレント方式が採用され、キーコンポーネントである光モジュールには、これまでにない多機能を集積しながら、低コスト、高品質かつ高い量産性で製造することが求められる課題があった。
 従来、100Gの多重化された符号を処理するために、多数の部品を精密に光結合調整する必要があったが、当社では、光素子をレンズなどの光部品を介すことなく相互に直接実装する光素子直接実装技術により部品点数を極限まで削減する構造を開発した。加えて、画像認識により光素子の位置を粗調整した後、光出力を監視しながら位置を微調整する高精度かつ高効率な自動組立技術を開発し、大量産性に優れた低コストな100G光モジュールの実用化に世界に先駆けて成功した。
(1)光素子直接実装技術:高速応答を維持しながら直接実装可能なPD(Photo-diode)素子、直接結合に最適化したPLC(Planar Lightwave Circuit)素子、同一平面にない異平面間ワイヤ接続技術を新たに開発し、レンズを介することなく光素子どうしを直接実装する技術を実用化した(図1)。
(2)自動組立技術:機械学習(遺伝的プログラミング)による信頼性の高い画像認識技術と、最小限の実測データから光素子の最適な位置を予測する予測調芯技術を新たに開発し、サブミクロンオーダーの高速組立を実現した (図2、3)。これらの技術により100Gビット伝送に必要な性能とコストを高い量産性で実現し、100G光ネットワークの全世界での普及をリードした。100G光コンポーネント市場(トランシーバー、変調器、復調器)で世界シェア1位であり、急速に拡大するトラフィック増加を支え、世界規模の産業発展への効果が期待される。

図1