市村産業賞

第51回 市村産業賞 功績賞 -02

低被ばく・高画質X線透視装置の開発と実用化

技術開発者 株式会社 日立製作所 研究開発グループ
デジタルテクノロジーイノベーションセンタ
研究員 燒橋 健太
技術開発者 同社 同グループ ヘルスケアイノベーションセンタ
主任研究員 荻野 昌宏
技術開発者 同社 ヘルスケアビジネスユニット 開発統括本部
部長 鈴木 克己

開発業績の概要

1.開発の背景
 医療の高度化に伴い、患者の身体的負担が少ない低侵襲治療の適用が増えている。低侵襲治療では、患者の体内に挿入した微細な処置器具の位置や動きを客観的に把握するため、これらをリアルタイム動画像で鮮明に描出できる高画質なX線透視装置が必要である。
 一方、X線透視装置には被ばくの少なさも求められる。低被ばく化によりX線感受性が高い小児などへ活用の幅を広げられるほか、医療従事者の不要な被ばくも低減できる。
 しかし、低被ばく化を図るためにX線照射量を減らすと、動画像のノイズが増加し画質が悪化する。従って、X線透視装置には低被ばくと高画質を両立する技術が切望されてきた。

2.開発技術の概要
 低被ばく条件下でも高画質な動画像を生成する新画像処理技術を開発した。
技術1 動き追従型高画質化技術:X線照射量を50%低減しても画像のS/N比を2倍に向上できる被写体の動きに注目したノイズ低減方式を開発した。
技術2 動き追従型画像補間技術:X線照射回数を2コマに1回に減らし低被ばく化した上で、前後のコマから補間した画像を生成することで、滑らかな動きの動画を提供する技術を開発した。

3.開発技術の特徴と効果
 本技術により、患者と医療技術者の被ばくが大幅に低減し、より安心して装置を利用できるようになった。また、高画質化により微細な処置器具が鮮明に見えるようになったため、高度な治療でも処置が行いやすくなった。本技術は2015年より日立製作所製「X線透視撮影システムCUREVISTA」など5シリーズの機種に搭載されており、すでに全国の400施設を超える医療機関で導入されている。医療従事者からは被ばくの少なさと画質の良さの両面で高く評価されている。


図1

図2