波長が220-350nmの深紫外LED(発光ダイオード)・半導体レーザは、医療、殺菌・浄水、高密度光記録、照明、生化学産業、化学工業、公害物質の高速分解など、幅広い分野での応用が考えられ、その実現が強く期待されている。しかし、深紫外発光素子を実現する上で最も有望な材料系であるAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)系混晶半導体は、得られた結晶の欠陥が多く、そのため深紫外発光効率が著しく低減するばかりでなく、p型化の困難により電子注入効率が低減することから、これを用いた深紫外LEDの開発は難しかった。
受賞者は、高品質AlGaN系混晶半導体の結晶成長技術の開拓を行い、短波長・高効率深紫外LEDの開発を行った。まず、高品質のAlN(窒化アルミニウム)を成長する新手法「アンモニアパルス供給多段成長法」を独自に考案・開発し、サファイア基板上に成長したAlNバッファー層の貫通転位密度を、従来に比べ1/100程度に低減させることに成功した。貫通転位密度の大幅な低減により、AlGaN量子井戸の深紫外発光の内部量子効率は、従来の0.5%程度から50%程度まで向上した。また、AlGaNにIn(インジウム)を混入することで結晶内に組成変調を導入し、キャリアの局在効果を用いることにより、80%程度の非常に高い内部量子効率を実現した。さらに、多重量子障壁を電子ブロック層として用いた電子リーク制御法を活用し、従来20%程度であった深紫外LEDの電子注入効率を80%以上に改善させた。これらの技術を用いることにより、波長220-350nm帯高効率深紫外LEDを実現した。特に殺菌、医療用途として重要な260-280nm波長帯において、10mW以上の出力で連続動作する実用レベル高出力深紫外LEDを世界に先駆けて実現し、深紫外LEDの幅広い応用を切り開く上で先駆的な貢献をした。
図1 実現したAlGaN系深紫外LEDの構造と発光の様子、及び動作スペクトル
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