市村学術賞

第46回 市村学術賞 貢献賞 -01

単純形状に基づく超高精度形状基準器の開発と工業規格化・標準化

技術研究者

京都大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻
准教授  小森 雅晴

技術研究者

独立行政法人 産業技術総合研究所 計測標準研究部門
主任研究員  近藤 余範

技術研究者

同研究所   同部門
副研究部門長  高辻 利之

推  薦 京都大学

研究業績の概要

 自動車などの機械製品では動力伝達のために多くの歯車が用いられる。歯車は歯面の表面の1μm程度の凹凸形状が性能に影響するため、高精度な歯車形状測定機により検査される。測定機の測定精度は、より精度の高い基準器を用いて検査・校正される。測定機の精度は基準器の精度以上のものとはなり得ないため、基準器には極めて高い精度が要求されるが、従来の基準器は複雑な三次元曲面を有するため高精度加工が難しく、その精度は1μm程度しかなかった。そのため、産業界の要求を満足するものとはなっていなかった。
 そこで、本技術では、複雑な三次元曲面を製作するという従来の基準器思想から脱却し、球や平面などのナノ精度での製作が可能な単純形状を用いた基準器を開発した。これにより、従来の基準器の精度に比べて一桁高い0.1μmレベルの精度の基準器を実現可能にした。また、温度変化に対して安定した基準器とすることが可能となった。
 本技術により、測定機の精度を正確に評価できるようになるため、高精度な測定機や歯車製品が真に高精度であることを証明できるようになり、品質・技術水準の高さを客観的に示すことが可能となった。本基準器は単純形状のみを用いるため、製作コストを低く抑えることができる。また、基準器設計法も構築し、一般公開しており、誰でも設計・製作可能となっている。さらに、従来の基準器では実現不可能であった、小型歯車(直径数mm以下)や大型歯車(直径数m)用の基準器も実現可能である。本技術はその有効性が産業界・社会から高く評価されており、本技術を基にした3つのJIS規格が発行されている。これにより、誰もが信頼して共通に利用できる計測技術基盤となっている。これらの結果、産業・社会の最も基盤となる計測技術・品質保証技術の向上に貢献している。

図1