市村学術賞

第47回 市村学術賞 貢献賞 -01

蛋白質蛍光ラベル化プローブの創製による機能分子イメージング

技術研究者

大阪大学 大学院工学研究科 生命先端工学専攻
教授 菊地 和也

推  薦 大阪大学

研究業績の概要

 受賞者は以前に、蛍光プローブの開発により生物機能をはじめて明らかにし、さらに生体深部における酵素活性を検出する高感度MRI プローブを作成し、他の技術では見えない分子機能を可視化してきた。本研究では、汎用的に使用できるプローブ開発を行い、応用範囲の広いスイッチング機能を有する細胞内蛋白質ラベル化法を開発した。さらに、蛋白質分解のリアルタイムに解析する技術開発に着手し、化学プローブを細胞・in vivoへと応用することで、生物学における新たな知見を見出してきた。
 受賞者は機能性小分子プローブをデザイン・合成し、生きた状態での生体内分子が有する生理機能の直接観測を行った。この目的のため、可視化解析に使用できる化学原理を精査し、分子プローブを開発した。具体的には、蛋白質の機能性分子ラベル化技術を開発した(図1)。この展開により、有機合成が得意とする多様な標的への分子設計と、分子生物学技術を融合させることを実現した。
 上記の機能解析手段は超分解顕微鏡等、近年急速に発達してきた。しかし、実際に使用されている化学プローブは蛍光蛋白質を用いる場合が殆どであり、その発現タイミングや発現強度の制御は容易ではない。このため、詳細な時間と局在解明に対応した技術を創り出す研究は皆無であった。この状況下、受賞者は、時間を特定して標的蛋白質に蛍光団を導入する原理を開発し、分子認識あるいは酵素反応を分光情報へと変換できるプローブを作製し、生物応用に成功してきた。本手法の利点は、化学プローブのデザインにより細胞内蛋白質に自在に機能分子を付与できることである。特に本研究では、細胞内蛋白質を瞬時にラベル化し、その分解機構を可視化解析で明らかにした。さらに、メチル化されたDNAを検出するプローブを作製し、細胞核内のエピゲノム現象をイメージングすることに成功した(図2)。

図1
図2>