市村学術賞

第48回 市村学術賞 貢献賞 -01

フルスペック8K スーパーハイビジョンイメージセンサの開発

技術研究者 日本放送協会 放送技術研究所 テレビ方式研究部
北村 和也
技術研究者 同協会 同研究所 同研究部
安江 俊夫
推  薦 日本放送協会

研究業績の概要

 8K スーパーハイビジョン(以下、8K)は、高い臨場感や実物感を実現する次世代の放送方式であり、その映像フォーマットはITU-Rなどの国際標準規格で定められている。中でも画素数3,300万やフレーム周波数120Hzなど、規格を最上位で満たす映像フォーマットはフルスペック8Kと呼ばれ、対応したイメージセンサの早期開発が求められている。しかし、フルスペック8Kでは、現行のハイビジョン放送に比べ画素数やフレーム周波数が大幅に増加することから、イメージセンサの速度性能の向上や、消費電力の低減などが課題となっていた。
 受賞者らは、イメージセンサ内に用いるA/D変換回路に注目し、その回路構成を工夫することで、消費電力を抑制しながら高速度化できることを見出した。新たに開発した“2段サイクリック型A/D変換回路”は、サイクリック型と呼ばれるA/D変換回路を2段に分割し、直列接続したものである。2つのA/D変換回路をパイプライン方式で並列に動作させることで、処理時間を低減し、高速度化を図った。また、各段で処理するビット数の配分を最適化することにより、消費電力を従来の1/3に低減できることを明らかにした。このA/D変換回路をイメージセンサに組み込むことで、世界初のフルスペック8Kイメージセンサを2.5Wの低消費電力で実現した。
 本イメージセンサを用いた放送用8Kカメラが開発され、すでに多くの8Kコンテンツが制作されている。今後、医療や科学、セキュリティ分野などにおいても、高精細・高性能カメラ用センサとして広範囲に普及して行くことが期待される。

図1

図2