市村学術賞

第48回 市村学術賞 貢献賞 -04

近接場光を用いた革新的サブナノ平滑化による産業応用展開

技術研究者 東京大学 大学院工学系研究科
准教授 八井 崇
推  薦 東京大学

研究業績の概要

 電子デバイスおよび光デバイスの発展には、表面平坦化が最も重要な鍵となる。これは、表面粗さによって、機器に利用される電子や光の散乱によるエネルギーロスが加速度的に増大するためである。従来の表面平坦化は、化学機械研磨(CMP)法によって行われているが、平滑化に限度があること、平滑化された基板に機械的欠陥や異物が残留してしまうこと、等の深刻な問題を生じる。そこで、CMP を利用しない非接触かつ、サブナノ平滑化が可能な究極の加工技術の開発が本研究の目的である。本技術により得られる摩擦フリー、欠陥フリーな表面を有するデバイスによる省エネ・創エネ実現が本研究の意義である。
 上記目的を実現するために、空間的非一様な局在光(近接場光)を利用するエッチング(近接場光エッチング)技術を開発した(図1)。近接場光は原子寸法の突起に対しても発生するため、最終的に得られる基板表面は原子寸法での平坦性を有する。また、非接触手法であるため、砥石を用いた場合にはエッチングが不可能である立体構造の表面に適用可能である(図2)。また、光化学反応であるため、あらゆる材料の表面平坦化に適用可能であり、その発展性は計り知れない。
 本技術は、表面粗さを低減可能という高精度化を実現しているのみでなく、従来平坦化が全く不可能であったものを可能にするという、言わば研磨技術のパラダイムシフトを実現している。

図1

図2