市村学術賞

第49回 市村学術賞 貢献賞 -01

リアルタイムGNSSを活用した巨大地震規模即時推定手法の開発

技術研究者 東北大学 大学院理学研究科附属
地震・噴火予知研究観測センター
准教授 太田 雄策
推  薦 東北大学

研究業績の概要

 地震とは、プレート境界等の断層が高速にすべる現象そのものである。海底下で地震が発生し、その規模 (マグニチュード) が大きい場合には津波を引き起こし、沿岸部に甚大な被害を与える。そのため、海底下で起きる地震の規模およびその断層面の広がりを迅速かつ正確に把握することは、防災・減災上の観点からもきわめて重要である。一般的に、地震規模推定には短周期に感度が高い地震計を用いる。一方で、そうした地震計を用いた地震規模推定では、長周期のエネルギーが卓越するマグニチュード8を大きく超えるような巨大地震の地震規模を、原理的に過小評価してしまうという問題があった。
 こうした背景のもと、受賞者は高時間分解能のGNSS(全地球測位システム)データのリアルタイム解析で得られた時系列から永久変位およびその量を自動検知・推定し、それを用いて地震規模とその断層面の広がりを即時推定する手法を開発した。GNSSによって得られる観測量はその観測点における変位 (DC成分) であり、長周期側の極限である。そのため長周期成分が卓越する超巨大地震に対しても、その感度が不足することがない。また受賞者は、開発した手法を2011年東北地方太平洋沖地震時のデータに適用し、地震後5分以内でその地震規模と断層面の広がりを正確に推定できることを示した(図)。さらに、推定された断層面に基づいて津波予測を行うことで、高い精度で到達時刻および波高を推定可能であることを示した。これらの技術は国土交通省 国土地理院の電子基準点 (GNSS) リアルタイム解析システムに技術移転され、リアルタイムでの地殻変動監視へ活用されている。

図1