近年、インフルエンザの大流行や、院内感染に対する対策の必要性が増している。インフルエンザでは、毎年流行する季節性インフルエンザに加え、数十年に一度世界的流行をもたらす新型ウイルスの出現、高病原性のトリインフルエンザや豚インフルエンザの変異によるヒトへの感染が危惧されている。院内感染では、免疫力の低下している患者が、薬剤耐性を持つ病原菌に感染した場合、治療が難しく患者の生命健康に重大な被害を及ぼす懸念がある。申請者が開発した膜親和型カテキンは、既存承認薬が効かない変異種にも適応できる新しいタイプの抗ウイルス・抗菌剤として期待されるものであり、これを不織布部材に搭載する技術を開発する。
申請者は、緑茶成分として知られるカテキン(EGCG)を酵素触媒反応により改質することで、病原体の膜成分に対する親和性と、酸化に対する安定性を向上させた膜親和型カテキンを合成し、タミフル耐性ウイルス、トリインフルエンザウイルスなど、膜タンパク質・表面抗原の異なるウイルスにも高活性を示すこと、また、薬剤耐性菌を含むグラム陽性菌、陰性菌、更に、カビ類(真菌)に対しても抗菌・殺菌性を示すことを確認してきた。本開発では優れた特性を持つ膜親和型カテキンをマスク等の乾式不織布部材、及び、ウェットティッシュ等の湿式不織布部材に適用するため、搭載条件などの試験研究を行い、抗ウイルス・抗菌部材を試作開発することが目標である。
市場性のあるコストと突発的流行にも対応できる大量生産可能な製造法により、幅広い病原体に対応でき、人に優しく使いやすい不織布繊維製品が実現できれば、飛沫感染対策、接触感染対策に広く用いられることが期待され、我が国のみならず世界的な規模で、健康社会の実現に資すると期待される。
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