医薬品の安全管理、製品保証は非常に重要な課題であり、日本の製薬業界の国際競争力確保のためにも重要な技術である。近年急速に開発が進むテラヘルツ波による計測は、X線と比べ低エネルギーのため、医薬品の薬効変化を抑えることが可能な3次元計測技術として、今後の応用が期待される分野である。
本技術は、テラヘルツ波による微小異物の検査システムの実現を目指すもので、テラヘルツの多くの物質に対する透過性を利用し、医薬品の中の異物を0.1mmの大きさまで検出することを狙いとする。本システムで用いるパルスエコー方式の模式図を図1に示す。図のように、テラヘルツ波を空間中に走査し、反射波の時間計測を行うことで、医薬品内部の3次元構造を可視化し異物の検出を行う。システムの全体構成を図2に示す。本システムは、テラヘルツの発生/計測用のフェムト秒ファイバーレーザと光伝導アンテナ(PCA)を用いたパルスエコー方式の3次元計測装置であり、特にテラヘルツ波の波長以下の分解能で計測するため、分散補償光学系、高速・安定な遅延光学系、高感度を実現するアンテナ構造、データ処理アルゴリズム等の多くの工夫により、従来提案者が実現していた0.3mmの異物検出能を0.1mmまで高める。
この0.1mmの検出仕様は、医薬品製造メーカのニーズから設定されたもので、メーカと共同で評価を行うことで現場でのニーズとのマッチングを進める。このテラヘルツ波による計測は、金属、プラスチック、紙、水等多くの物質中に対して3次元計測の実現が期待される技術であり、様々な産業分野への波及効果が期待される。
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