植物研究助成

植物研究助成 21-01

植物研究園における3次元計測データを用いた景観シミュレーション

代表研究者 大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科
准教授 中村 彰宏

背景

 景観が重要視される庭園や公園では、整枝や剪定などの樹木管理が重要である。これまで筆者らの研究によって、庭園を対象とした景観シミュレーションには、レーザスキャナで得られたデータが有用であることが明らかとなった。しかし、このような景観シミュレーションを行うには、処理能力の高いパソコンと高額のソフトウェアの導入が必須であり、誰もが使える状態ではない。また、3次元データは、アニメーションとして配付することも可能だが、非常にデータ量が大きく、web上で公開することも現状では困難である。樹木切り下げの景観シミュレーションを考えた場合、研究室内のパソコンで行うよりも、現場で現状の景観と比較しながら行う方が、はるかに実益が大きい。

目的

 そこで、本研究は、3次元データが得られたエリアを対象とし、景観のすぐれた視点に立った状態で、持ち運びのできるモバイル端末上で景観をシミュレートできるシステムを構築すること、これまで得られたが3次元データを公開することが目的である。具体的には、樹高成長にともなう景観の経年変化の描画、特定の樹木の伐採や切り下げを行った場合の景観描画を可能とし、配付可能でモバイル端末上で動作するプログラムを開発すること、植物研究園の景観を誰もが閲覧できるようなシステムを既存のGISサーバソフトなどを用いて構築することである。

方法

 研究対象地は植物研究園とし、2年間行った園内の3次元計測を継続し、園内のほぼ全ての地形データを取得する。平成23年度中に達成される樹木成長にともなう景観の経年変化、伐採や切り下げ時の景観の描画、現在位置である視点から見える天空の視野率などを計算するプログラムを作成する。現在位置と方位情報は、モバイル端末に接続したGPSデータなどを利用する。web上で景観を閲覧可能にするために、CADソフトを用いてデータを軽量化した上で、サーバ機能を持つGISソフトに景観データを格納して公開する。

期待される成果

  まず、web上で3D景観を公開することにより、画質は落ちるが植物研究園の3次元的な構造を誰もが認識できるようになる。安価なモバイル端末を用いて、高額ソフトなしで景観をシミュレートができるようになり、多くの人が3次元データを活用できる。様々な庭園や公園などの樹木管理に応用ができ、特に現場での管理に威力を発揮できると考えられる。住宅の設計や公園での植栽計画にも利用でき、樹木成長時の景観シミュレーションができるため、植栽時だけでなく、長期間経過した場合の景観特性を把握が可能であり、造園や建築の分野での応用が期待できる。