植物研究助成

植物研究助成 21-16

地上型3Dレーザースキャナーを用いた材積算出方法の確立

代表研究者 千葉大学 大学院園芸学研究科
助教 加藤 顕

背景

 近年森林整備を促進するためにJ-VER(カーボン・オフセット制度)が導入され、森林域における二酸化炭素吸収量及び炭素蓄積量が注目を集めている。J-VERの枠組みの中では、電力会社が木質ペレットに加工し、混焼してエネルギーを得た場合、化石燃料使用を削減したと認証する動きもある。しかし、森林資源量を正確に計測する技術が確立していないため、森林の成長がペレット利用の消費サイクルに追いつかず、過剰伐採される恐れがある。よって、森林域の木質バイオマスの資源量(炭素蓄積量)を測定する客観的手法の確立が望まれている。

目的

 森林域における炭素蓄積量・成長量の算出根拠は、材積(幹体積)である。これまで材積は、材積式と呼ばれる伐倒調査によって作成された式に、樹高と胸高直径の現地計測値だけ用いれば、樹木全体の幹体積を簡易的に算出できた。しかし、本研究では地上型3Dレーザースキャナーを用いて樹木幹形状全体を伐倒することなく詳細に直接計測し、その形状データから材積量を正確に把握する手法を確立することを目的とする。

方法

 本研究に用いる最新型地上型3Dレーザースキャナー(RIEGL VZ400)は、半径100mの範囲を1秒間に12万5千点もの高密度レーザー照射が可能であり、3次元点群としてデータを取得する。取得されたデータ全体から幹部を独自のプログラム(特願特願2011-227165「三次元測定対象物の形態調査方法」)で抽出し、ラッピング法と呼ばれる表面再現アルゴリズム(特願2009-282331「表面再現方法及び表面再現プログラム」)を適用すれば、幹形状を表す正確な表面を作成できる。また同時にその体積も自動で算出可能であるため、幹部の点群から幹体積(幹材積)が自動算出可能である。よってどの様な樹木の幹形状に対しても幹材積を自動で算出できる。
 しかし、これまで針葉樹を対象としてプログラムを開発しており、より複雑な幹形状に対してプログラムを改良する必要がある。広葉樹や熱帯林といった複雑な幹形状にも対応できる汎用性の高い手法の確立を目指す。

期待される効果

 材積式は主に1960年〜1970年代に作成されてきたため、長期管理放棄された現在の森林状態に合わない。森林の現状は病害等による成長阻害が起きており、材積式作成時とは異なる幹形状を持つ樹木が増えている。その不定形な幹形状を対象とした材積のより正確な計測・算出手法が確立すれば、これまで材積式が作成されていない広葉樹や熱帯樹木に対しても、誰でも同じ様に幹材積を算出できる。よって、本解析手法の適用範囲は広く、開発される手法が世界的標準手法となる可能性も高い。