植物研究助成

植物研究助成 21-22

みどりを最大限に活用した住宅の省エネルギー方式の動的解析と評価

代表研究者 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学
上席研究員 奥島 里美

背景

 過去に例を見ないような巨大な震災とそれに伴う原子力発電所の事故により、我が国の電力供給量は大きな影響を受け、あらためて将来的には原子力発電所への高い依存度も問題となり、休止中の原子力発電所の再稼働も危ぶまれる状況にある。したがって、今後数年の間は電力需要、特に夏場の電力消費を大幅に削減することが必須となった。このような事態を受けて、震災後の夏場を中心にグリーンカーテンと総称される、みどりを利用した冷房負荷軽減策が各所で試みられたが、夏場に大きく変動する気象条件を考慮した動的な解析は行われたとはいいがたい。

目的

 グリーンカーテンをはじめとするみどりを利用した夏場の冷房負荷軽減による消費電力削減を圃場実験とシミュレーションにより、定量的に解析する。気候の変動や負荷の変動を考慮した動的な解析を行い、今後、みどりを利用した消費電力削減システムを導入しようとする場合の指針を作成する。

方法

 圃場での実験と建物の動的環境シミュレーションソフト(TRNSYS)による解析を行う。2棟の小型温室を用いて、一般住宅より過酷な条件を作る。一方を対照区として、何もしない状態とよしずなど潜熱交換のない通常の日よけの状態を作り、他方にグリーンカーテンを施し、植物の定量的な把握と、環境条件の変化を比較記録し解析する。
 TRNSYSは、ウィスコンシン大学太陽エネルギー研究所が1975年に開発し、その後改良されてきた世界的なシミュレーションソフトで、グラフィックユーザーインタフェース(GUI)に優れているため使いやすく、かつ今後、自然エネルギー利用の中心となる地中熱利用に於いても有限要素法による3次元解析モジュールを数種類すでに備えており、それ以外にも800以上に及ぶ制御機器や手法さらに最適化のモジュールをすでに保持している。気象データに関してもAMEDASデータの利用や圃場での実測値の利用ができる。また、モジュールの追加等が可能である。ただ残念ながら、植物に関するモジュールは皆無である。そこで、植物に関するモジュールを追加開発することで、植物を含むモデルも扱えるようにする。

期待される成果

 動的かつ定量的な実験とシミュレーションによる解析により、今後は各種のケースに応じた条件設定のもとで、シミュレーションにより、みどりを利用した消費電力削減システムの効果を予測することが可能となり、システム設計が容易になり、そのシステムを事前にテストすることなく、計画的な節電効果をあらかじめ知ることが出来る。