植物研究助成

植物研究助成 22-05

植物研究園水域に堆積する植物残渣からのメタン生成に関する研究

代表研究者 大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科
助教 遠藤 良輔

背景

 自然界のメタンは、有機物が種々の嫌気性土壌微生物によって分解される過程で生じる。植物研究園では、研究園内を流れる川の底泥や、川に近接する半湿地化した場所で、常態的な嫌気性土壌を確認できる。メタンは二酸化炭素の25倍の温室効果を持つ地球温暖化ガスであるが、グローバルなメタンの動態に関する研究が盛んである一方、土壌環境が微生物のメタン生成に直接的に及ぼす影響については不明な点が多く、ミクロなスケールでの解析はあまり進んでいない。

目的

 研究園内水域における水質変化および植物残渣バイオマス量と、水域土壌を用いたメタン発酵実験およびメタン生成シミュレーションから、植物研究園水域からのメタン生成について解析を行う。

方法

 植物研究園にて水質および植物残渣量のモニタリングを、大阪府立大学にてメタン発酵実験を行う。園内水域の上流およびため池で、pH・酸化還元電位(ORP)・水温を計測し、周年環境を把握する。また、昨年度までに作製したメタンガス回収装置を用いて定期的にガス捕集を行い、ガス組成の分析を行う。
 実験では、植物残渣の蓄積および土壌環境が嫌気性消化に及ぼす影響について調べる。基質投入量と土壌の割合、および土壌の圧密度を数段階変化させて得られるメタン生成量を計測する。最後に、植物研究園内における植物残渣からのメタン生成リスクと、これらをバイオマスとして回収・利活用した場合のエネルギーポテンシャルについて解析を行う。

期待される成果

 植物研究園においては、過去の研究により園内の気温のモニタリングや植物の三次元構造からバイオマス賦存量が求められている。本研究は、これらに園内のメタン生成量および将来の生成リスクを付与することによって、植物研究園における植生のありかた、また、土壌環境と微生物の関係がもたらす環境影響について知見を得ることができると考えられる。さらに、植物残渣の効率的利用による温暖化緩和効果についても定量化することが期待できる。