植物研究助成

植物研究助成 22-10

伊豆地方の高等植物における性分化ホルモンの多様性評価

代表研究者 静岡大学 若手グローバル研究リーダー育成拠点 (農)
特任助教 (テニュアトラック) 大西 利幸

背景

 高等植物は、雌花と雄花を別の個体にもつ雌雄異株があり、雌雄異株には「性転換」する種類がある。サトイモ科テンナンショウ属は、主に温帯域域に分布する多年草であり、球茎は漢方薬に用いられている。テンナンショウの性転換は球茎の大きさにより起こり、球茎が小さいときは花を付けず、球茎が肥大するにつれ雄花、次に雌花をつける。球茎サイズと性転換の関連はあるが、分子レベルにおける性転換制御機構は未解明である。近年、哺乳類固有の性ステロイドホルモンであるプロゲステロンが被子植物、裸子植物、苔類などから発見され、葯の伸長を促進することが報告されている。また植物ステロイドであるブラシノステロイド (BR) も球茎肥大に関与すると報告されている。申請者は植物ステロイドホルモンがテンナンショウの性転換を制御する鍵化合物であると考えた。

目的

 これまでに性決定には植物ホルモンであるオーキシンやサイトカイニン、エチレンなど化学的因子と、染色体XY型の存在やX染色体と常染色体の比率など遺伝的因子が関与していると報告されている。しかし、性転換に関する化学的解析はほとんどなされていない。本研究は球茎の肥大に深く関与する植物ホルモンに焦点を当て、「性転換」を化合物レベルで探求することにより、植物の雌雄異株の生態の一つである性転換機構を化合物レベルで解明することを目的にする。

方法

 多様な植生を有する伊豆半島系固有のテンナンショウの球茎の重量を指標にクラス分けし、各クラスの地上部および地下部に含まれるステロイド化合物の定量解析を行う。また花芽形成モデル植物アオウキクサを用いてテンナンショウ抽出物の花芽促進試験を行う。

期待される成果

 植物の性転換制御機構を化学的に解明することは、遺伝子操作に頼らない性分化の制御することを可能にし、不稔による植物バイオマス生産の減少を低減する一つの糸口になると期待できる。