植物研究助成

植物研究助成 22-14

地上レーザーによるツバキ材積算出手法の開発

代表研究者 千葉大学 園芸学研究科
助教 加藤 顕

背景

 ツバキ(Camellia japonica)は青森から鹿児島まで広く分布する照葉樹である。最近ではツバキオイル(椿油)として美容分野で利用されるようになり、資生堂(株)から商品化され、販売している。日本での二大生産地は静岡県伊豆大島と長崎県五島列島にあり、野生種ヤブツバキの実から油を絞り出す。しかし収穫の豊凶が激しく安定供給できず、その豊凶の原因は未だ解明されていない。幼樹は光の弱い林床を好むが、成木になると樹冠を覆う優先木になるため、ツバキ周辺の森林管理を行わなければ、持続的にツバキ林に自然更新できない。現状では、コスト面から十分に森林管理ができず、放棄林での収奪的林業を行っており、持続的経営が危ぶまれている。

目的

 ツバキ林を適切に管理し、ツバキオイルを安定的に供給するために、本研究の共同研究先である長崎県五島列島でツバキの分布域を把握し、現存するツバキの生育環境とツバキの正確な材積を把握する。さらには、収穫される実の生産量とツバキの現存量を比較して、ツバキ林の最適地の把握や管理が必要な場所を明らかにしたい。その結果、ツバキ林の持続的生産可能性を評価したい。

方法

 レーザーリモートセンシングはこれまで不可能であった樹木の3次元構造を効率よく、正確に計測することができる。特に最近では地上レーザーによって不定形樹木でも正確に材積を直接計測できるようになり、過去に作成された材積式を使用しなくても構造物を詳細に計測することができるようになった。照葉樹は葉が密集しており、樹木の幹部までレーザーが透過できないことが多いため、レーザーによって材積(幹体積)を直接計測が難しいが、レーザー反射の多い葉量(葉面積指数)から材積を推定するモデル式を作成し、現存量をより正確に把握したい。これまで葉面積は魚眼レンズ等によって測定されてきたが、レーザーデータから葉面積指数を算出することで、天候に関わらずより正確な葉面積指数を算出し、その値から材積を推定するモデルを構築する。レーザーによって把握した現存量(材積)と実の収穫量とを比較し、ツバキの生育適地を評価する。

期待される成果

 地上レーザーデータの3次元データ解析結果とバイオマス量を比較することで、これまで作成が難しかった材積式を伐倒することなく地上レーザーによって効率良く作成できる。また、生育に必要な光環境もレーザーから葉面積指数を用いて推定できる。これら3次元地上レーザーの解析結果をツバキの実の生産量と比較することで、ツバキの最適地、管理の必要な場所を把握でき、さらには持続的経営のための正確な情報を提供できる。