植物研究助成

植物研究助成 22-16

高収量バイオマス竹稈の探索を目指した超音波探傷技術の応用

代表研究者 富山県立大学 工学部 生物工学科
准教授 荻田 信二郎

背景

 タケは、発生-伸長-成熟のプロセスを3-5年程度と極めて早いサイクルで達成するダイナミックな栄養繁殖様式を有している大型植物であり、セルロース系バイオマスとして有望視されている。日本竹林の主要構成種は温帯性マダケ属であり、地下茎を発達させ、一定の間隔で新たな筍を広範囲に発生させることから、単軸型(散稈型)と呼ばれる。また、少数であるが熱帯性のバンブーサやデンドロカラムス属も九州などに分布しており、これらは地下茎が拡大することなく地下部の大型芽子塊から多くの筍を発生させることから、連軸型(株立型)に分類される。これらは新たなリソースとして非常に興味深い。

目的

 これまでに見出した日本風土に適応する連軸型バンブーサ属中実稈種は、維管束系が稈の中心部にまで広く分布し、同等の直径で比較すると材積が従来の2倍強である。稈の中空は竹材の材積を極端に低下させる、また輸送コストを増大させる、さらには竹材の力学的特性等に影響を与えることが、明らかであり、中空の改良が、タケバイオマスの効率的な利用を促進する重要な鍵であるといっても過言ではない。従って、本研究では、このような中実タケを「バイオマス高収量型のタケ」の候補品種と位置づけ、同様の組織形態を示すタケを探索する技術として、非破壊検査技術である超音波探傷技術の応用方法を確立することを目的としている。

方法

 温暖な気候であり、様々なタケの生育に適している静岡県内を主な研究フィールドとして、まず、竹稈の中空-中実状態の探索に関しては、タケの生長過程において、既存および改良型の超音波探傷子を併用して経時的な測定を行い、データを蓄積する。加えて一部のタケに関しては、伐採し、稈の中空の程度、含水率、組織形態観察などを行い、非破壊検査データと実測データを比較検討する。幾つかの候補個体が選抜できれば、その候補タケに細胞・組織培養技術を応用して、詳細な解析を行うための生長モデルを構築する。

期待される効果

 タケなど大型植物の生長様式調査を行う際、フィールドで応用できる非破壊検査法にて解析対象を絞り込むことは非常に有効なツールとなる。もし超音波探傷子法でバイオマス高収量型のタケを探索でき、その成立要因を明らかにできれば、自然科学分野の研究発展に寄与できることはもちろんのこと、材積の増加=CO2削減効果の高いバイオマス植物を創出でき、日本の森林生態系の有効活用に活路を見出すことができる他、タケ由来の代謝産物に着目している医農薬、タケバイオマスを加工原材料として位置づけている製紙、繊維等の幅広い工業分野で将来的に予想される研究成果を活用できると期待される。