植物研究助成

植物研究助成 22-18

レーザー分光法を用いた光合成過程のCO2の葉内通導性の高速・多サンプル測定法の開発

代表研究者 農業環境技術研究所
任期付研究員 児玉 直美

背景

 植物の水利用効率は乾燥ストレスの指標として用いられ、炭素の取り込みと水の損失によって決定される。決定要因の1つは、光合成過程のCO2の通導性であり、従来は葉の表面に存在する気孔の開閉によって制御をしていると考えられてきた。近年の研究で葉の内部の通導性が植物のバイオマス獲得にとって気孔と同程度かそれ以上に重要な要因であることが解明されつつあり、そのデータの蓄積とメカニズムの解明が必要とされている。イネ科の草本は葉内の制御の幅が大きく品種間差が大きいことが予測されている。葉の内部のCO2の通導性は安定同位体比を用いて推定する方法が一般的であり、従来は質量分析計を用いて測定をしていたが、1日数サンプルの測定しかできなかった。近年急速に発展のあったレーザー分光法を応用することで安定同位体比の高精度・高頻度の測定が可能になり、従来の数十倍の効率で測定が可能となった。

目的

 日本の主要穀物であるイネを対象として測定を行う。レーザー分光CO2分光計を応用し、葉内CO2の通導性を高速かつ多サンプル測定をできるシステムを開発し、実験室内の測定によって、精度を検証する。この組み合わせによって高精度・高速で多サンプル測定が可能になる測定技術を開発する。

方法

 本レーザー分光装置は既に研究所に整備されているものを用いる。多サンプル測定を達成するために葉チャンバーを5連で実装した光合成・蒸散測定システムを組み上げる。レーザー分光装置と連結し、チャンバーからのサンプルを自動で切り替えながら、レーザー分光装置に流しCO2の安定同位体比を直列で測定する。このシステムによって、従来の数十倍の効率でCO2通導性の気孔による制御と葉内による制御を同時に計測することが可能になる。、材料は遺伝的背景の異なるイネ品種を用いる。

期待される成果

 この装置は今後チャンバーを改良するなどして様々な植物種にも適用することが可能となる。様々なイネ品種や植物種に適用することで乾燥ストレス耐性の系統分類学的・進化生物学的な解明に近づくことが可能になる。