植物研究助成

植物研究助成 22-22

みどりを最大限に活用した住宅の省エネルギー方式の動的解析と評価

代表研究者 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
上席研究員 奥島 里美

背景

 東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故により、我が国の電力供給量は大きな影響を受け、あらためて将来的に原子力発電所への高い依存度も問題となっている。したがって、今後長期的に電力需要の削減に取り組んで行かねばならない。特に夏場の電力消費を大幅に削減することが必須となった。この事態を受けて、グリーンカーテンと総称される、みどりを利用した冷房負荷軽減策が盛んに試みられるようになってきているが、夏場に大きく変動する気象条件を考慮した動的な解析が行われたとはいいがたい。

目的

 平成24年度植物研究助成を受けて、夏場の大きく変動する気象条件下でグリーンカーテンの冷房負荷軽減メカニズムを圃場実験とシミュレーションにより、定量的に解析した。この成果を発展・活用してみどりを活用した住宅の省エネルギーの具体的方式を提示する。
 特に、1)植物と環境条件の定量的把握の精緻化をはかり、各地の気象特性に応じたグリーンカーテンの種類の選定が行なえるようにする。また、2)動的シミュレーションを通して、冷房負荷軽減に有効なグリーンカーテンの設置場所や栽培期間等の具体的な設計支援ツールを開発する。

方法

1) 複数の1年生ツル性植物および人工グリーンカーテンについて蒸発散量と動的気象条件の関係を圃場実験により長期間把握し、平成24年に開発した予測式の精緻化を図る。また、建物の動的環境シミュレーションソフト(TRNSYS)の植物モジュールに反映し、植物種選択機能を付加する。
2) 開発した植物モジュールと気象データモジュール、建物モジュール等を組み合わせ、グリーンカーテン、屋上緑化、壁面緑化の動的シミュレーションモデルを構築する。

期待される成果

 動的かつ定量的な実験とシミュレーション解析により、みどりのカーテンシステムの設計や効果の予測が可能となり、計画的な節電効果をあらかじめ知ることが出来る。
 TRNSYSをベースとして緑のカーテンをモジュール化にすることにより、計算ツールとして、世界中での利用と継続性が可能となる。