植物研究助成

植物研究助成 23-06

伊豆地方のテンナンショウにおける性分化制御物質の化学的研究

代表研究者 静岡大学 農学研究科
准教授 大西 利幸

背景

 サトイモ科テンナンショウ属は、主に温帯域域に分布する多年草であり、球茎は漢方薬に用いられている。テンナンショウの性転換は球茎の大きさにより起こり、球茎が小さいときは花を付けず、球茎が肥大するにつれ雄花、次に雌花をつける。球茎サイズと性転換の関連はあるが、分子レベルにおける性転換制御機構は未解明である。これまでに我々は新技術開発財団 第22回植物研究助成を受け、内生ステロイド分析実験により哺乳類の性ステロイドであるプロゲステロンがテンナンショウに存在し、生殖器官 (雌蕊と雄蕊) における内生量に有意差があることを明らかにした。

目的

 そこで本研究では、生殖器官 (雌蕊と雄蕊) において有意差が確認されたプロゲステロン作用機序を解明するためにプロゲステロンおよびその生合成中間体の化学分析を行う。またプロゲステロン以外の性分化制御物質の探索のため、生殖器誘導・抑制に特化した生物試験系であるカニクサ (シダ植物) の造精器および造卵器形成をスクリーニング指標とした生物活性試験を行う。

方法

1) テンナンショウ属の雌花、雄花、球茎の採取: 新技術財団植物研究園および静岡大学天城フィールドセンターでテンナンショウ採集を年3回行う。
2) プロゲステロン生合成中間体の定量変動解析: 平成25年度に確立したプロゲステロン分析手法に基づいてプロゲステロン生合成中間体の定性および定量分析をLC-MSを用いて行う。
3) カニクサ造精器・造卵器形成を指標とした生物活性試験: テンナンショウより抽出精製した画分を生殖器誘導・抑制モデル植物カニクサに与え、造精器または造卵器形成に寄与する化合物を探索する

期待される成果

 植物の性転換制御機構を化学的に解明することは、遺伝子操作に頼らない性分化の制御することを可能にし、不稔による植物バイオマス生産の減少を低減する一つの糸口になると期待できる。