植物研究助成

植物研究助成 23-09

照葉樹林下の庭園における観賞果実への鳥類等の干渉に関する研究

代表研究者 大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科
助教 大野 朋子

背景

 鳥類による種子散布は二次林の生物多様性の維持に重要な役割を果たすとされるが、民家庭園の植物への干渉の実態はほとんど分かっていない。鳥による種子拡散は、他の散布型よりも大きいため、庭園管理上の問題になるだけでなく、周辺の里山への園芸品種や国外産植物の拡散の原因となる。庭園植物の中には野鳥の餌となる果実も多く、鳥類は紫外線領域等によっても果実を識別しているとされ、鮮やかでない果実でも拡散が認められる。照葉樹林下の庭園では、多くの在来種が使われているが、鳥類による干渉が時間的空間的に及ぼす影響はよく判っていない。この実態の理解は、生物多様性保全に配慮した庭園管理技術の策定や適正な植栽計画などにおいても重要である。

目的

 鳥類による果実の食餌と散布の実態と庭園植物の野生化の実際を客観的に把握するために餌となる果実の色や形状、大きさ、吸光の状態を計測し、鳥類と果実との関係性を調査する。また、野生化しやすい庭園植物を事例として情報を整理し、環境に配慮した庭園植物の植栽と管理における基礎的知見を得る。

方法

鳥類による果実の見え方のリスト化:植物研究園および伊豆半島と堺市周辺の民家庭園に植栽されている植物の果実の色を携帯型マンセル色彩計によって計測するとともに赤外線および紫外線カメラで撮影し、果房の形状、果実の平均的な大きさと形を測り、鳥類による果実の見え方(推定)を樹種ごとにリスト化する。
鳥類の種と餌となる果実の把握:野生化が危惧される庭園植物を既存文献等より抽出し、自動撮影カメラによる撮影と直接観察により採食する鳥類の同定と果実の採食頻度を樹種と鳥の種ごとにまとめる。
成果の公表:情報を総合して、鳥類の採食が庭園植物の種子の拡散に及ぼす影響について考察し、関連学会で口頭発表するとともに、論文を執筆する。

期待される成果

 外来種も含めて庭園で維持されている園芸植物の種子拡散の過程と野生化の可能性を明らかにするので、環境に配慮した庭園デザインや管理計画に寄与するだけでなく街路樹や公園施設等における緑化施工管理にも応用できる知見が得られ、造園学、緑化工学、資源保全学など幅広い領域での活用が期待できる。