植物研究助成

植物研究助成 23-12

伊豆諸島および伊豆半島におけるフォッサ・マグナ要素植物群落の比較生態学的研究

代表研究者 (公財)地球環境戦略研究機関 国際生態学センター
上席研究員 村上 雄秀

背景

 生物多様性の保全において地域固有種の生態やその持続的な生育立地の把握は必須といえる。伊豆半島および伊豆諸島周辺の固有種はフォッサ・マグナ要素(前川 1949)に含められ、草原生のユキヨモギ、低木林生のハチジョウグワ、森林生のオオシマカンスゲなど多岐な植生に出現する。フォッサ・マグナ要素にはソナレセンブリなど島嶼および半島に共通する種も含まれるが、ソナレマツムシソウなど同じ海岸草原生でありながら島嶼で分布を欠く種も存在する。その要因にススキ草原を産しない島嶼独特の地域植生の類型、構造や組成の関与が推定される。フォッサ・マグナ要素の地域間の分布特性や種分化の特性に関する群集生態学からの研究は大場(1971)以来、実証的な研究をみない。

目的

 伊豆諸島および伊豆半島に産するフォッサ・マグナ要素植物の分布特性、種分化に関し、群落形成の基盤となる群集構造について植生学的なアプローチを行う。フォッサ・マグナ要素を含む2地域の共通/固有の植生を対象とし、両地域での種組成(競合/共存種・随伴種)・生育立地・群落環などの比較により、地域間での固有種群落の分化と生存環境の共通性/差異を明らかにする。もって現況の固有種の減少にかかわる無機的・生物的要因の洗い出しを行う。

方法

 主たる調査対象は伊豆諸島およびそれと気候的な共通性が高い伊豆半島の沿海部植生とし、フォッサ・マグナ要素に含まれる両地域間の固有種/共通種を含む同位の群落において全構成種の記録を伴う植生調査を実施する。両者の種組成、種多様性、生育立地、群落環の比較により、群集内外の競合/共存種、ニッチの確保の差を求める。一例として両地域に共通するタニウツギ-ヤシャブシオーダーの植生である半島のハコネウツギ林と島嶼のニオイウツギ林の種組成・生態の比較により、両群集の分化・成立・持続要因を確定する。

期待される成果

1. 地域固有種群落の島嶼/半島間での種組成、分布要因、群落環などの比較によるフォッサ・マグナ要素絶滅危惧種の保全策の基盤的情報の整備
2. 同位群落における競合/共存種の比較に基づく外来種侵入への耐性評価
3. ソナレセンブリなど伊豆半島におけるフォッサ・マグナ要素絶滅危惧種に関する減少要因の推定と保全策の提示