植物研究助成

植物研究助成 23-16

茶葉発酵リアルタイム観察方法の開発

代表研究者 山形大学 工学部 技術部
技術専門職員 堺 三洋

背景

 紅茶にはカテキン類が発酵を経ることにより酸化重合したポリフェノールの一種であるテアフラビン類およびテアルビジン類という赤色を呈する成分が存在し、紅茶におけるこれらの成分は鮮やかな水色と同時に抗ウイルス性や抗酸化性に優れた特性を持つ。また、テアルビジン類はテアフラビン類よりも10倍程度多く紅茶に含まれているため紅茶の主成分である。テアフラビン類は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法で分析することができるが、テアルビジン類は分子構造が複雑でありHPLC法では明確なピークが得られないため分析することが困難であり更に解明すべき点が多い。

目的

 茶葉に含まれるカテキン類がポリフェノールオキシターゼにより紅茶テアフラビンおよびテアルビジン類等に変化する様子をリアルタイムに画像計測できる方法を開発する。

方法

 国内の茶畑にて摘み取った直後のフレッシュな茶葉をイメージスキャナーやデジタルカメラ等を用いて可視光(RGB)および近赤外画像データを得る。茶葉は揉捻することにより約1時間〜24時間程度で紅茶に変化するため茶葉に人工的に傷を付けることでポリフェノールオキシターゼによる紅茶発酵を促すようにする。また発酵過程を経時的に画像イメージとしてとらえることで茶葉のリアルタイムな発酵過程を観察し、得られた画像イメージを計算により光スペクトルデータに変換し色の違いを調べる。更に筆者が開発中である色素増感型太陽電池(DSC)をセンサーとしたポリフェノール分析方法やHPLC法やフォーリンデニス法等との関連についても調査検討を行う。

期待される効果

 茶葉発酵過程におけるリアルタイム画像イメージが得られるため、発酵途中および育成中茶葉内の有効成分の分布状態や茶葉の健康状態等を把握できる新しい計測手法となる。また、市販品スキャナやカメラ等を利用するため低コスト分析方法としてアジア各国や個人経営の農家でも導入しやすくなる。本研究は植物の褐変化についても同様に観察可能なため応用研究が期待できる。