植物研究助成

植物研究助成 23-17

植物工場を高度化する環境計測・拡張提示システムの構築

代表研究者 木更津工業高等専門学校 情報工学科
講師 渡邊 孝一

背景

 温暖化や異常気象のため、植物工場が注目されている。植物工場は施設内の温湿度やCO2濃度、光強度などを計測制御し安定した農作物の供給を目的としているが、現状は定点観察に基づく計測制御であり、群落における蒸散速度、光合成速度、植物成長情報を推定することは困難である。太陽光型植物工場において使われる、海外の既存の装置は大規模向けで高価であり、国内環境での普及は難しい。

目的

 植物工場内の温湿度やCO2、群落画像情報などの時空間分布計測を行い、換気回数、蒸散速度、光合成速度等の推定および実時間制御により、農作物の収量最大化を実現することが大きな目的である。環境情報を取得するためのセンサ群を有する環境計測制御ロボットシステムを提案・構築し、自律もしくは操縦により任意空間地点へ移動させて計測した環境情報から時空間情報を含むデータベースを構築する。画像取得再生を主とする評価・提示のためのバーチャルリアリティ(VR)空間を構成し、栽培者が直感的に理解しやすい情報提供を実現することで統合的な植物工場の高度化を目指す。高度な計測制御を提供しつつも、可能な限り安価で小型なシステムを提供する。

方法

 計測制御システムとして人の代替となるロボットを用意し、カメラを主とした各種センサを搭載し自律的に任意地点の環境情報の時空間計測を行いつつ、必要に応じて遠隔から操縦する。計測した環境情報はデータベース蓄積しVR情報空間を構成するとともに、時間変化を数理解釈した上で計測制御へフィードバックする。数値に不慣れな栽培者へ時空間問わず情報を効果的に提供するため、拡張現実感を用いて実空間映像に水蒸気飽差や群落体積変化など植物生育に直結するVR情報空間を重畳表示し直感的解釈を促す。ロボットにはセンサ群の移動を可能とするアームや空間計測用のカメラ・レーザレンジファインダを搭載し簡易操縦機能を実装する。遠隔操縦にはテレイグジスタンスに基づき人の存在感覚を優先した没入感・即時性を重視する設計指針を採用する。ロボットの形態は様々で、カメラ・レーザレンジファインダのみで移動機能を持たず俯瞰を記録し続けるものや、レール上を往復するセンサ群など環境情報取得に最適なシステム配置を検討し連動する。

期待される成果

 ロボットによる自律的計測や遠隔からの操縦機能により栽培責任者が施設内に常駐する必要性がなくなり、人的負担軽減のみならず将来的な施設増大に対して人員確保の要となりうる。開発するシステムは、農業に対する工学的アプローチとしてのプラットフォーム確立と、ロボットシステムの社会応用基盤の確立の双方への寄与が期待できる。