植物研究助成

植物研究助成 24-08

革新的培養基材の開発と植物生態関連微生物ライブラリーの構築

代表研究者 筑波大学 生命環境系
教授 青柳 秀紀

背景

 植物生態研究において、植物と共生、共存、相互作用する微生物を単離培養し、機能を解明することは重要である。微生物の単離培養には、19世紀にコッホらが確立した寒天平板培養法(従来法)が国内外で広く使用されているが、近年、“従来法では自然界の微生物の1%程度しか培養できない”ことが明らかにされている。現在、残された99%の未培養微生物の活用を目指し、次世代シークエンサー等を活用した環境ゲノムの網羅的解析が、国内外で行われ、膨大なゲノム、遺伝子情報が蓄積されている。しかしながら、塩基配列からだけでは分からない未知機能の解明や、実用的利用を行う際、未培養微生物の単離培養が必須であるが、従来法の限界を打破できる培養基材は開発されていない。

目的

 本研究では、従来法の限界を打破できる実用的な未培養微生物単離培養基材を開発し、植物研究園の様々な植物や土壌試料を対象に、従来法では困難な多様な未培養微生物の単離培養を実現し、植物生態研究において新規性、有用性、の高い微生物ライブラリーの構築を目指す。

方法

 植物種固有の共生、共存微生物や土壌微生物が存在するため、多様な樹木や草花が安定して存在し、採取可能な植物研究園を使用する。季節ごとに様々な植物の各部位や土壌の試料を植物研究園で採取し、本申請で開発する培養基材と従来法で微生物を単離培養し、両者で得られた微生物を比較し、本培養基材の有効性を示す。取得した新規微生物の生理性状解析、同定を行い、植物生態研究において新規性、有用性の高い微生物ライブラリーを構築する。

期待される成果

 開発する培養基材により、植物生態研究に関連する微生物の研究で、ボトルネックとなっている、多様な未培養微生物の単離培養やライブラリーの構築が可能となり、植物生態研究の進歩に貢献できる。本培養基材は、環境ゲノム解析データー等と組み合わせることで、植物生態に有用な未知微生物の機能解明や、利活用が期待できる。微生物の単離培養は基盤技術であり、本培養基材は国内外の植物生態研究に関連する微生物のみならず、他の様々な微生物関連研究分野で有用性が高い(豊富な植物や微生物資源を有するアジアやアフリカ現地でも使用可能であり、使用範囲は広い)。