植物研究助成

植物研究助成 24-12

太陽光型植物工場における環境変化に応じた細霧発生による気温・飽差適応制御の研究

代表研究者 木更津工業高等専門学校 電気電子工学科
准教授 浅野 洋介

背景

 平成24年度からの3カ年計画でNPO植物工場研究会を中心として、千葉大学、木更津高専、東京大学と株式会社大仙、株式会社前川製作所、日本電気株式会社他が『植物工場の高収量化・高効率生産をIT技術で支援する統合型環境制御システムの開発実証事業』に取り組んでいる。我々の研究グループでは、「細霧発生による気温・飽差インテリジェントコントローラ」のプロトタイピングを完了させ、平成25年3月から千葉大学柏の葉キャンパス5号棟においてトマト栽培における実証実験を継続して実施している。その結果、無噴霧区に比べ20%程度の収量向上が得られている。さらに平成26年8月から福島県いわき市大野水耕において、いちご栽培における実証実験を開始した。

目的

 本研究の目的は、太陽光型植物工場において、蒸散速度や光合成速度を推定するために空間データの可視化やモデル化を行い、農作物の収量最大化を実現することにある。具体的には、コンピュータビジョンを用いた新しい適応制御則を確立・提案し、これまで開発してきた気温・飽差インテリジェントコントローラに組み込んで提供する。

方法

 これまでに、農水省緑と水のプロジェクトにおいて、気温・飽差の計測・制御システムのプラットフォームを構築してきた。本研究では、既存の気温・飽差インテリジェントコントローラに新たに高感度なビジョンセンサを導入する。このビジョンセンサにより細霧の空間分布を時系列データとして計測し、既に開発した通風筒型乾湿球デジタルセンサにより算出した水蒸気飽差の時系列データと相関をとり、空間システムを数理モデル化する。これまでの研究から春季・秋季における乾燥期や夏季の高温多湿期など季節や時刻によってシステムの挙動が大きく変化するため、制御ゲインを適切に設定する必要があることがわかっている。現在のシステムでは細霧を連続噴霧出来るように制御ゲインを調整している。そこで、我々は、変化する環境に対して随時同定実験を実施しモデル化するとともに、適応制御系を構築することで動的に制御ゲインを変化させ、最適な気温・飽差制御を行えるように実現する。 また、このビジョンセンサは、植物の生育状況を観察できるように配置し、蒸散速度の推定結果と生育速度結果を比較検討することで速度パラメータの制御則の確立を開拓する。

期待される成果

 植物工場の気温・飽差が適応制御されることで、栽培者が決定しなければならなかった制御ゲインを自動的に決定出来るようになる。蒸散速度の推定結果と生育速度結果を比較検討できれば、速度パラメータ制御への道が開拓できる。