植物研究助成

植物研究助成 24-15

植物イオン電荷計測システムの開発

代表研究者 九州産業大学 工学部 物質生命化学科
准教授 高橋 芳弘

背景

 植物生体内では環境変化に応じた様々な反応が起きており、イオン類の電気化学的反応もその一つである。現在の技術において、植物に何らストレスを与えずに生体内イオンの動向を把握する技術は確立されていない。一方植物では、生理作用の結果として、酸素、二酸化炭素、水あるいはエチレンなどを大気中に放出する事は古くから知られている。そこで我々は、これらの物質と同様に生理作用の担い手であるイオン(プラスイオン・マイナスイオンなど)も植物体外へ放出されている(もしくは漏れ出している)可能性を検討するため、磁気浮上電極電離箱をベースとした超高感度の空間イオン電荷量測定装置の開発を進め、植物から放出される微弱イオン電荷の計測に成功した。

目的

 本研究では、大気の電離電荷(バックグラウンド)に埋もれた極微量の電荷量をも計測できる空間イオン電荷量測定装置を用いて、植物から放出される微弱イオン電荷を非破壊的かつリアルタイムで計測する植物イオン電荷計測システムを開発すると共に、植物の生理作用との関連性を検証する事で、効率的な植物栽培技術基盤を確立する事を目的とする。

方法

 空間イオン電荷量測定装置にエアー流入装置やインキュベータを付け加えた植物イオン電荷計測システムを製作し、様々な環境条件下で植物から発生するイオン電荷と生理作用との相関を明らかにすると共に、計測技術の精度向上を目指す。

期待される効果

 本研究は、最新の工学的方法で植物の生理作用を把握する画期的な研究であり、植物の環境応答機構と放出イオンとの関連性が明らかになれば、短期間で植物の最適栽培条件などを見出すことが可能となり、サイエンス農業や高機能植物(漢方薬草など)・絶滅危惧種などの効率的栽培技術基盤への展開が期待できる。さらに、収穫後の農作物の鮮度維持などに関連する新たな知見獲得へも幅広く応用出来る為、得られる成果は、生産から流通、そして消費に至るまでの幅広い分野に大きく貢献出来ると考えている。