植物研究助成

植物研究助成 24-17

アポプラスト中の植物ホルモンの網羅的計測技術の開発

代表研究者 新潟大学大学院 自然科学研究科
教授 児島 清秀

背景

 地球の環境を維持するには、緑を守り育成することが重要である。そのための植物の生態研究には基礎として生理機構の解明が必須である。植物体内では情報伝達は植物ホルモンが担っている。
 内生ホルモンの情報は信頼性が低い生物検定や初期的な計測機器による計測に基づいており、ホルモン計測技術の開発が必須である。
 ホルモン計測は、遺伝子解析に必須であり、世界的に遺伝子研究への集中があるので先端的なオンリーワンの基礎研究として世界に誇れる。欧米でも植物中の6種類の内生植物ホルモンを網羅的に計測した報告はない。

目的

 植物ホルモンは複合的に植物の生長・分化を制御するので、網羅的な一斉計測を目的とする。
 さらに細胞膜の外側の領域であるアポプラスト中のホルモンが直接的に生理現象を制御すると考えられるので、植物のアポプラスト液の6種類のホルモンの分布と消長の計測技術を開発する。

方法

 植物内の植物ホルモンの分布・消長を網羅的に計測する。HPLCシステムで、6種類の植物ホルモンの系統的な精製法を確立する。
 対象は、生理活性型の天然型の植物ホルモンである。これまでに同時計測法を開発済みの植物ホルモンは4種類で、さらに2種類も含める。
 これまではそれぞれの植物ホルモン毎に独特の精製方法が大量に開発されて使用されてきた。それらには、様々な担体のオープンカラム、様々な会社からの精製資材、使い捨てのミニカラムなどがあり、それぞれの方法を使いこなすために職人芸的な修練を必要とした。
 本研究では、HPLCを駆使して、1段階目のHPLCでは大量の抽出物から各植物ホルモンを分取して、2段階目のHPLCでは高度に精製する。次に高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)により網羅的な計測を行う。

期待される成果

 6種類の植物ホルモンの9つの生理活性型の網羅的計測法により、植物の内生植物ホルモンの分布と変動が明らかになり、生態研究を含む植物全般の生理的研究の発展の基礎となる。分析の労力は飛躍的に軽減するので、より短期間での計測が可能になる。