植物研究助成

植物研究助成 24-21

伊豆地域の農業に依存した半自然草地の植物の多様性に関する研究

代表研究者 静岡大学大学院 農学研究科
教授 稲垣 栄洋

背景

 わが国の半自然草地は、急激に減少しており、里地里山の草原性植物は危機的な状況にある。特に農業によって維持される里地型の草地の減少は著しい。そのような中で申請者は、静岡県の茶栽培によって維持される半自然草地の価値を評価し、世界農業遺産への登録を行った。他方、伊豆地域では柑橘栽培や伝統的な野菜栽培によって維持される半自然草地があるが、これらの半自然草地の価値は十分には評価されておらず、植物の多様性は危機的な状況にある。

目的

 伊豆地域に見られる農業によって維持される里山の半自然草地の保全・回復方法を明らかにするため、柑橘や地域野菜栽培などの地域農業における草地利用と半自然草地の植物の多様性との関係を調査し、植物の生物多様性を評価するとともに、草原性植物群落の成立・維持機構を解明する。

方法

 本研究では、柑橘や地域特産野菜栽培等の伊豆地域の農業に依存した半自然草地の植物の多様性と維持機構の解明を目的として、(1)地域農業に依存した伊豆地域の半自然草地の分布と植物相、(2)伝統的な農業の半自然草地の維持機構、(3)農法や管理技術と植物相との関係、(4)「茶草場」との比較による、伊豆地域の特徴の解明。(5)以上を統合した、伊豆地域の半自然草地の成立・維持機構の解明と効果的な保全・回復手法の提示、の5つの研究を行う。調査地域は主に、東伊豆地区、中伊豆地区、西伊豆地区、南伊豆地区の里地里山型の半自然草地とする。

期待される成果

 里地里山域の半自然草地の減少要因は、開発による減少だけでなく、新・生物多様性国家戦略が指摘する「利用の減少」にある。このことから、里地里山における半自然草地を保全する上では、草地を利用する農業との関係を解明し、評価することが重要である。
 他方、ヨーロッパにおける半自然草地研究の成果は、保全のためのガイドラインに応用され、生態系保全のための農村計画に活用されている。本研究において、茶園以外の農業の半自然草地保全の機能が評価されることによって、生物多様性保全のための管理法が明らかとなるとともに、草地を保全する地域農業支援の根拠となることが期待される。