植物研究助成

植物研究助成 24-22

我が国の樹木年輪への放射性核種の取り込みメカニズムの解明

代表研究者 北海道大学大学院 工学研究院
助教 太田 朋子

背景

 従来の植物の放射性核種の取り込みに関する研究では、土壌-植物間の放射性核種の環境移行パラメーター・TF(移行係数)をベースにしており、根からの放射性核種の取り込みを前提としている。樹木中の放射性セシウムの取り込み経路は、Chernobyl事故の観測から、経根吸収が主なルートであると国際社会で認識され評価モデルが構築されてきた。この国際的な認識を基にした吸収モデルによる評価では、福島の樹木中の放射性セシウム濃度は経根吸収により今後15年にわたって濃度が増加すると予測されているが、申請者らは土壌の化学的性質が異なる我が国の森林汚染の評価には適用できないと考えている。

目的

 本研究では、我が国の土壌化学的性質条件を考慮した評価モデルの根幹をなす放射性セシウムによる樹木汚染ルートの検証を行う。

方法

 福島県の森林樹木年輪中のマルチトレーサー分析とともに、我が国の土壌化学的性質条件および土壌中の放射性セシウムおよび土壌水の鉛直方向の浸透速度を考慮した樹木中の放射性セシウムの経年変化モデル構築のためのフィールドデーターの取得を行い、樹木中の放射性セシウムの未来評価モデルの構築を行う。

期待される成果

 福島は県土面積の71%が森林であり、我が国でも林業が盛んな木材資源の生産地である。この研究は、土壌中の放射性セシウムと土壌水の鉛直方向浸透速度を考慮した新しい評価モデルを構築でき、森林・木材資源中の放射性セシウムの未来予測を示すことが可能となる。