植物研究助成

植物研究助成 25-14

太陽光型植物工場における環境変化に応じた細霧発生による気温・飽差適応制御の研究

代表研究者 木更津工業高等専門学校 電気電子工学科
准教授 浅野 洋介

背景

 NPO植物工場研究会を中心として、千葉大学、木更津高専、NEC、関係会社が『植物工場の高収量化・高効率生産をIT技術で支援する統合型環境制御システムの開発実証事業』に取り組んできた。我々の研究グループでは、「細霧発生による気温・飽差インテリジェントコントローラ」を開発し、トマト栽培における実証実験を行ってきた。その結果、無噴霧区に比べ20%程度の収量向上が得られている。平成27年度には、本助成により噴霧時の時系列画像を解析することで細霧濃度を計測し、システムのモデル解析を行い、モデルを同定することが可能となった。そこで、環境・気候変動に応じたモデル同定手法を高度化し適応制御系を実現すれば、より収量向上が期待できる。

目的

 本研究の目的は、太陽光型植物工場において、蒸散速度や光合成速度を推定するために空間データを可視化・モデル化し、農作物の収量最大化を実現することにある。具体的には、空間の温度変化速度と周期性を熱画像センサにより計測することで、速度に基づいたモデルを得る。次に、モデルから安定した連続噴霧により日射や換気などの外乱を推定・抑圧する適応制御を提案する。さらに開発してきた気温・飽差インテリジェントコントローラに、同定したモデルを組み込んだシステムを実現する。

方法

 これまでの申請者らの研究成果から、水蒸気飽差の応答は周期性を持ち、日射・窓換気と細霧の気化による温湿度変化が平衡し、むだ時間を含むシステムであることがわかってきた。気候に応じた飽差制御を自動化するために、応答の微分値である速度パラメータ、加速度パラメータに注目する。空間内の応答速度パラメータおよび周期性を広範囲に計測するためには熱画像カメラを活用する。非線形システムの解析・制御おいて、状態の位相面を得ることは重要である。そこで、応答と速度パラメータによる各種状態変数の位相面解析を行う。位相面に現れる特徴的なサイクルをとらえ、速度次元における水蒸気飽差の適応制御を実現する。これまでに研究開発した、細霧の濃度分布計測技術、単純適応制御に基づいた細霧発生と組み合わせることで、植物の蒸散速度制御則を確立する。

期待される成果

 植物の蒸散速度を制御することができれば、生育を調整することが可能となる。これまでに飽差の速度パラメータに注目した研究例はなく、蒸散速度の推定結果や育成速度結果との比較検討により、植物工場における速度パラメータ制御への道を開拓することができる。