植物研究助成

植物研究助成 26-12

マイクロ・チップを用いた誘引物質・忌避物質同定手法の提示

代表研究者 大阪大学大学院 工学研究科
助教 洞出 光洋

背景

 植物と相互作用する誘引物質・忌避物質の同定や、それらの定量的解析技術は、植生の生態維持や、農薬スクリーニングへの応用に繋がる。代表研究者は微細加工が専門であり、近年では細胞の単離・解析用マイクロチップデバイスや、生体外で人工臓器を製作するための細胞操作マイクロロボット開発を行ってきた。本研究では、マイクロ流路チップを用いた工学的計測手法を提案し、誘引物質・忌避物質の同定、さらにそれら細胞や誘引物質のリアルタイム観察に挑戦する。マイクロ流路チップを用いた細胞マニピュレーション手法は、流路内で微細操作が完結するため、コンタミネーションや技術熟練の問題を解決できる。

目的

 本研究の目的は、細胞の単離・操作、ならびに誘引物質・忌避物質との相互作用確認までの一連の工程を、顕微鏡下で1つのチップ上で完結する手法を提示することである。チップ上に微小な流路や反応室、混合室を設け、血液やDNAを分析する生化学分析デバイスとして発展した手法である。本研究テーマでは、要素技術の確立に焦点を充て、広い応用性を提示する目的で、細胞サイズの異なる根、茎、花粉等を対象とし、さらに忌避生物等を対象にした反応実験を行う。

方法

 半導体プロセスを用いて、シリコーン樹脂製の流路チップを製作する。生体適合性と透明性に優れ、顕微鏡下で通常の in vitro 実験系と同様のシステムで観察できる。チップには、細胞投入口、細胞単離領域、反応物質投入口を構成する。また細胞単離領域はスリットやポール形状とし、対象細胞や固体種によって最適な形状を開発する。

期待される成果

 従来の計測方法に比べ、チップデバイスを用いることにより、実験の高精度化、高速化だけでなく、多点観察や並列処理などが可能になる。細胞単離が容易で、細胞―分子レベルでの相互作用の解明が可能になり、共栄植物のメカニズム解明等にも期待できる。チップは1個あたり100円以下で製作可能であり、汎用性が高く、本研究成果の提示により、新規計測法として展開できる可能性が高い。