植物研究助成

植物研究助成 27-13

レーザー分光計測装置を用いた富士山麓森林における窒素酸化物のフラックス計測手法の開発と応用

代表研究者 帝京科学大学 生命環境学部
准教授 和田 龍一

背景

 大気環境に影響を及ぼす反応性窒素ガス(主に一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)等の窒素酸化物)の発生・沈着量の時間変動とその要因の解明が遅れている。反応性窒素ガスは、植物により吸収・吸着され、また土壌から放出されることから、森林生態系内部では窒素酸化物のリサイクリングが起きており、森林生態系は反応性窒素ガスの発生・沈着量の時間変動の重要な要因の一つと考えられる。しかしながら森林内部空間における窒素酸化物の動態に関する研究は少ない。これは森林生態系における反応性窒素ガスの濃度を高い時間分解能で正確に計測できる分析装置がほとんどないことが一因と考えられる。

目的

 本申請研究では、レーザー分光計測装置を用いた渦相関法によるフラックス(放出・吸収量)計測可能なNO計測装置を開発する。NO2フラックス計測を同時に実施し、森林生態系におけるNO、NO2のフラックスの日変化と季節変化を定量的に明らかにする。今後様々な森林生態系における窒素酸化物の吸収・沈着量のデータを蓄積することで、今まで難しかった大気・森林生態系間、および森林生態系内のNO、 NO2 のガス交換に関する知見を得る。

方法

 大気微量気体であるNOの渦相関法によるフラックス計測が可能な、レーザー分光法の原理を用いた計測装置を開発し、性能評価を行う。開発した計測装置を用いて、富士山麓森林にて渦相関法によるNOフラックス計測の実証試験を行う。本申請では2台のNO2レーザー分光計測装置を用いる。1台の大気試料にはオゾンを添加することで、NOをNO2へと酸化し、NOx(NO+NO2)として測定を行う。もう1台の装置でNO2濃度を測定し、NOx濃度からNO2濃度を差し引くことでNO濃度を得る。

期待される成果

 いままで難しかった渦相関法による窒素酸化物フラックス計測手法を確立することで、富士山麓森林だけでなく、今後様々な森林における窒素酸化物の吸収沈着量のデータを蓄積することが出来るようになる。森林内部の窒素酸化物の放出・吸収量の日変化・季節変化を、定量的に解明することで大気・森林生態系間および森林生態系内の窒素循環で非常に難しい部分であったNO、 NO2 のガス交換部分について空白を埋める効果がある。