植物研究助成

植物研究助成 28-17

芽生えに焦点を当てた植物種自動識別技術の開発による、フィールド植物モニタリング無人化の試み

代表研究者 東京大学 大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構
助教 郭 威

背景

 スマート農業では、農業生産過程の省力化(自動化・無人化)が求められており、その原動力として農業データ自動収集技術とデータ自動解析技術の開発に大きな期待が寄せられている。近年、地表走行ロボット、無人航空機(ドローン)が登場し、野外環境でも画像データの迅速な収集が可能となってきた。申請者らは現在、農地でも小回りの利く小型自走ロボットやリモートセンシング画像の植物位置情報の誤差を高精度に補正するアルゴリズムを開発中である。これに対し、植物画像ビッグデータの自動解析システムの開発は後れを取っている。特に、多様な植物種(作物・雑草)について自動識別技術が開発されれば、種に応じた高精度な局所管理(農薬散布・施肥・耕起)が可能となり、精密農業の無人化が現実的なものとなる。

目的

 本申請課題では、野外における植物種自動識別システムの開発にむけて、(1)画像データから芽生えの種を識別するシステムと(2)ドローン・ロボット自動撮影による農地での雑草および作物の芽生え位置の網羅的マッピング手法のふたつの新しい要素技術を開発することを目的とする。

方法

 (1)芽生え識別システムの開発:植物複数種(主要作物・雑草の他、保護すべき絶滅危惧種など、種子が収集可能で生育可能な種をほぼ全て網羅する)を栽培し、芽生え画像を大量に取得し、深層学習による植物種を識別するための分類器を作る。
 (2)画像自動取得とマッピング:高精度GPSの制御に基づくドローンおよびロボットの自動撮影プログラムを開発する。これにより、野外における植物の芽生えの画像とその位置情報を網羅的に収集するシステムを開発する。

期待される成果

 植物種の自動識別技術は、精密農業の無人化におけるキーポイントであり、スマート農業に革新をもたらす。例えば、強害草や外来植物の農地への侵入がリアルタイムで自動識別され、除草管理が効率的になる。また、作物個体の欠損箇所や個体ごとの生育も直ちに把握される。芽生えに焦点を当てた植物種の画像データセットと自動識別システムは、農学、環境学および、草地や海浜地の保全・群集生態学を大きく進展させる画期的な技術基盤である。