植物研究助成

植物研究助成 29-20

海岸林におけるクロマツ根系の最大深さ評価手法の開発

代表研究者 名古屋大学 大学院環境学研究科
准教授 平野 恭弘

背景

 東日本大震災時に津波を受けた海岸クロマツ林は、津波の力を低減させる役割を果たした一方で、根返りや幹折れ、流木化など壊滅的な被害を受けた。クロマツの被害程度は根系構造の発達程度と関連し、高い地下水位のために根が深くまで成長していないクロマツで根返りした個体が多かった。したがって、海岸林の減災効果を十分に発揮するためには深い垂直根を発達させたクロマツ林を育成する必要がある。震災後、海岸林の再生が行われているが生育途中の植栽クロマツの根の深さを評価する必要がある。しかし根の深さ評価には掘り取りによる破壊的な手法が必要なため、土を掘らずに根の深さを評価する非破壊的な手法の確立が急務である。

目的

 本研究の目的は、津波に対する減災効果を高める海岸林の持続的な育成のため、クロマツの垂直根の成長指標である根の最大深さを非破壊で評価する方法を提案することである。

方法

 海岸クロマツ林において、地中レーダを用いて非破壊的に地表面から根系探査を行い、根の深さ評価を試みる。レーダ探査後にレーダ反射波画像の解析から、深さ1mから3m程度における根の最大深さ位置の推定を行う。その後、実際にクロマツの掘り取りを行い、地中レーダを用いた根の最大深さ推定の精度検証を行う。さらに掘り取りを行ったクロマツの葉量や樹高など地上部成長指標と根の最大深さとの関係性を解析し、本調査と既存調査のクロマツ林データから、地上部指標を用いた根の最大深さ推定式を提案する。

期待される成果

 海岸クロマツ林の根の最大深さを非破壊で評価する方法が確立されれば、国内沿岸に広がる広域な海岸クロマツ林への実質的な応用が期待される。震災後急速に海岸クロマツ林の再生が実施されており、本研究手法の応用が成長期間の長いクロマツ林を持続的に減災効果の高い海岸林に導くという点で意義深い。樹木根の最大深さ評価は森林における土砂流出防止等の生態系サービスを高める観点からも、今後グリーンインフラの推進など樹木の根系が寄与する幅広い分野への応用が期待できる。