復興支援特定研究助成

復興支援特定研究-05

研 究 題 目
農業用導水路における除染のためのホタテブロックの開発と実証試験
所属機関・役職
首都大学東京 健康福祉学部 放射線学科・准教授
代 表 研 究 者
大谷 浩樹

【研究目的】

本研究の目的は、農業用導水路において放射性セシウムを除染するためのホタテブロックの開発を行い、その除染効果の実証試験を行うことである。
原発事故により放出された放射性セシウムは、広範囲にわたり分布している。とりわけ里山汚染からのセシウムは、沢水や導水路を通じて農業用水からの農作物汚染へとなる。この汚染経路において、導水路にて放射性セシウムを捕集することは急務であるとともに有効である。これにより農業復興への一助とする。

【研究方法】

ホタテ貝殻を固めてブロック状にするためにホタテ貝殻の粒径を調整し、その置換率を25、50、75、100%とし手動形成により固化しホタテブロックを作成した。吸水試験として、ホタテブロックを水中に入れ、各時間において質量を測定し吸水率を測定した。耐久性試験として、曲げ強度試験および圧縮強度試験を行った。
作成したホタテブロックに対して、ホタテ貝殻と既存のブロックの137Cs吸着能力を比較した。ホタテ貝殻の放射性セシウム吸着率を測定した。貝殻の大きさは一辺が3 cm以下に粉砕されている。作成したホタテブロック(置換率 25, 50, 75, 100 %)に対し、137Cs溶液500 mlを透過させ除染率を測定した。福島県郡山市の導水路にてホタテブロックを設置し、汚染水を透過させた前後の放射能濃度を測定した。

【研究成果】

吸水試験の結果、吸水率も質量も時間と共に増加し、平衡性は低かった。耐久試験の結果、強度にばらつきはあるが、JIS A 5371規格(3.0 N/mm2)内となったのは、50%および25%のホタテブロックであった。置換率が低くなるにつれ強度は大きくなったので、ホタテ貝殻自体の強度が小さいことが示唆された。
ホタテ貝殻の放射性セシウム吸着率の結果、除染率は80.4%であった。これはホタテ貝殻の多孔質の効果と考察された。ホタテブロック(置換率 25, 50, 75, 100 %)を用いた除染の結果、置換率が大きくなるほど除染率は高くなった。これはホタテ貝殻の多孔質性によるものと思われ、埃や塵などを含んでいない137Cs溶液であっても除染された成果は大きなものである。導水路にてホタテブロックを設置し、汚染水を透過させた実証試験の結果、いずれのホタテ置換率においても除染率は90%を超えていた。特に75%以上においては100%の除染率となった。環境における汚染水は、放射性セシウムが砂や塵に付着した状態で水中に混入しているため、ホタテブロックがそれらを捕集し除染可能となったと考えられる。

【まとめ】

ホタテ貝殻の多孔質性により放射性セシウムの除染効果に着目した除染研究を行った。ホタテ貝殻とセメントを配合し、ホタテブロックとすることにより効率よく除染を行うことを可能となり、取扱い容易な除染方法を確立することができた。