復興支援特定研究助成

復興支援特定研究-02

研 究 題 目
森林除染のための樹木年輪への放射性核種の取り込みメカニズムの解明
所属機関・役職
北海道大学大学院工学研究院・助教
代 表 研 究 者
太田 朋子

【研究目的】

福島県は我が国で最も林業が盛んな地域の一つであるが、2011年の原子力災害で県内の林業は甚大な被害を受けている。Chernobyl事故による放射性セシウムによる森林汚染の観測結果を基に国際的に構築された樹木へのセシウムの取り込み評価モデルでは、経根吸収が主体となっており、土壌の化学的性質が異なる我が国の森林汚染の評価には適用できない。本研究では、樹木年輪中の放射性セシウム、放射性カリウムの実測を行い、我が国の土壌化学的性質条件を考慮した評価モデルの根幹をなす放射性セシウムによる樹木汚染のメカニズムの解明を行う。

【研究方法】

樹木中の放射性セシウムの取り込み経路を検証するために、福島県林業研究センター演習林でフィールド調査を行い、福島のスギとコナラを複数の高さで伐採し、年輪毎の134Cs, 137Cs, 40Kの濃度分布を実測した。さらに、フィールドおよび室内試験を行い、樹木年輪中へのセシウムの分布を観測し、取り込み経路の検証を行った。

【研究成果】

福島県内のコナラ(落葉広葉樹)とスギ(針葉樹)の樹木年輪中の放射性セシウム濃度と土壌の深度プロファイルの調査を含むフィールド調査から、樹体中の放射性セシウムの吸収経路を分析し、1) 経根吸収の可能性は低いこと、2)コナラは樹皮から放射性セシウムが吸収されたこと、3)スギは葉面と樹皮から放射性セシウムが吸収されたこと、4)スギでは、葉面からの放射性セシウムの吸収は樹皮からの吸収より優位であることを示唆した。
樹木中の放射性セシウムの濃度の長期挙動の予測を行うために、実測データーを基にモデル計算を行ったところ、細根が地表から10cm以内にすべて存在しなければ経根吸収の影響はほとんど無視できると考えられた。

【まとめ】

樹木中の放射性セシウムの取り込みルートは、落葉広葉樹は樹皮、針葉樹は樹皮および葉であることがわかった。長期予測モデルを構築したところ、細根が地表から10cm以内に全てない限り、経根吸収は樹木中の放射性セシウム濃度を上昇させるために支配的なファクターとはならないと考えられた。