復興支援特定研究助成

復興支援特定研究-04

研 究 題 目
被災水田におけるバイオマス作物の栽培とエネルギー化
所属機関・役職
東京農業大学農学部・教授
代 表 研 究 者
森田 茂紀

【研究目的】

2011年3月11日に起こった東日本大震災により、東日本太平洋沿岸の水田を中心とした広い面積の農地に大きな被害が生じた。とくに原発事故に伴う放射能汚染や風評被害は深刻である。帰還希望者の生活を支え、雇用を創出するために農業の再生が必要であるが、旧来の警戒区域を中心とした被災地では、被災した水田は稲作を再開できず、放置されたままで荒地化している。そこで、食用米の生産再開が困難な地域では、バイオマス作物を栽培してエネルギー源とし、花卉の施設園芸などと組み合わせることで水田を保全しつつ、農業再生と雇用創出を実現して被災地に帰還する意図人が社会的な希望を持てるように支援していく。

【研究方法】

被災地の農業を再生・創成するために福島県浪江町をモデル地区とし、以下の調査・検討を行う。
(1) 除染作業の進捗状況も踏まえながら、稲作を再開すべき地域と、当面は他の用途で水田を活用すべき地域との区分を検討する。
(2) 当面、稲作を再開できない居住制限区域の農家水田を転換畑として供試し、バイオマス作物のエリアンサスとジャイアントミスカンサスの2種を、施肥や耕起などを行なわない極めて省力的な管理で試験栽培する。バイオマス収量のほか、土壌や栽培したバイオマス作物の放射性セシウム濃度を測定する。
(3) 得られたバイオマスの燃料ペレットへの加工適性や、加工・燃焼時の安全性を検証する。
(4) 以上を踏まえ、浪江町を中心に農業再生・創成プランを取りまとめ提言する。

【研究成果】

浪江町にはおよそ1,800 haの水田がある。沿岸部の避難指示解除準備区域を除いて、2014年に試験栽培された米は安全基準(100Bq/kg未満)を満たすなど、稲作再開に向けて進展が見られる。一方で、居住制限区域・帰宅困難区域については、今後の除染の進捗にもよるが、直ちに水稲作が再開できる状況にはなく、バイオマス利用が有力な対策となり得る。助成期間中に(2)を中心に研究を進めた結果、2種のバイオマス作物は、電気柵などのイノシシ対策を行い、初年度に早期に定植すれば、福島県の気象条件でも十分に生育可能であること検証できた。エリアンサスの場合、例えば500 haの被災水田で省力栽培すれば、2年目には乾物重量で1万5千トン以上のバイオマスを生産できる計算になる。(3)のバイオマスの燃料ペレット化や燃焼の安全性については、引き続き検証中である。この2種は、他の植物に比べて放射性セシウムを吸収しにくいだけでなく、冬枯れさせてから収穫することで、さらに濃度を下げることができることも明らかとなり、利用の安全面でも有利である。

【まとめ】

原発事故で被災した水田で燃料原料となるバイオマス作物を栽培し、バイオマスをペレット化して花卉栽培の暖房に利用することで農業を再生するというプランに、技術的側面から裏付けができた。今後、現地と連携しながら農業再生プランを完成させ、早期の実現を目指す。