市村産業賞

第47回 市村産業賞 貢献賞 -03

自律型セル生産ロボット

技術開発者 三菱電機株式会社 開発本部
役員技監 田中 健一
技術開発者 同社 名古屋製作所 ロボット製造部
部長 小林 智之
技術開発者 京都大学 工学研究科 機械理工学専攻
教授 椹木 哲夫

開発業績の概要

 変種変量生産に対応するため、1 人が多工程を実施する人セル生産方式が多用されている。一方、我が国では、中長期的には熟練工の退職や就労人口そのものが減少(2065 年に2010年の約50%に減少)する難しい局面を迎えている。日本のモノづくり力を維持・強化していくためには、生産ライン作業者及び設備設計技術者の減少や多品種対応で増大する設備設計負荷等の問題を克服し、人セル生産の柔軟性を持った自動化システム(自律型セル生産)を実現することで、モノづくりの世界にイノベーションを起こすことが求められていた。
 受賞者らは、産学が連携したオープンイノベーションを推進し、自律型セル生産の実現に必要な技術として、(1)把持可能な場所を最速1.2秒で認識するモデルレス認識技術を搭載した小型(約900g)3次元ビジョンセンサ、(2)情報可視化により教示作業時間を低減する教示支援技術、(3)複数台ロボットの衝突を自動で防止する干渉回避技術、(4)エラーを検知し自動で復旧するエラーリカバリー技術、(5)組立などの接触作業の高速化や組み付け時に検査を行うことで生産システムの作業時間を短縮する力覚制御技術を開発した。
 本技術により、電磁開閉器の変種変量生産を行うセル生産ロボットシステムを構築し、設置面積削減、システムの立上時間の短縮、生産効率と品質の両立を実現した。また、部品毎に専用設計される供給装置の組合せでしか実現できなかった複数部品の自動供給を行うバラ積み部品整列システムのプロトタイプを構築し、多品種対応設計の容易化を実現した。本技術を搭載した知能化ロボットF シリーズは、スマートフォンに代表される電機電子分野、自動車部品、食品・医薬品等の分野に広く採用され、経済活動の成長を支えている。


図1
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