市村産業賞

第50回 市村産業賞 貢献賞 -01

テラビット級長距離大容量光海底ケーブルシステムの開発

技術開発者 株式会社 KDDI総合研究所 ネットワークアーキテクチャ部門
主席研究員 鈴木 正敏
技術開発者 東京工業大学 『以心電心』ハピネス共創研究推進機構
機構長 秋葉 重幸
技術開発者 株式会社 KDDI総合研究所 ネットワークアーキテクチャ部門
執行役員 森田 逸郎
推  薦 一般財団法人 電気通信協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 国際間の通信トラヒックはインターネットや携帯電話の普及により急増し、それを収容する長距離光海底ケーブルの大容量化が不可欠であった。大容量化を図るため波長多重伝送方式が導入された日米間の光海底ケーブルでは、伝送路中で累積する波長分散(波長により伝搬速度が異なる性質)と非線形光学効果(光の強度により屈折率が変化する性質)の影響により、1波長当りの伝送速度は2.5Gbpsに制限されていた。

2.開発技術の概要
 光海底ケーブルシステムの光送信/光増幅中継/光ファイバの分散制御技術の全てを刷新し、波長多重伝送方式を用いた長距離光海底ケーブルシステムにおいて1波長当りの伝送速度を10Gbpsへ高速化すると共に100波長多重まで多波長化し、ファイバ当りの伝送容量を従来の約50倍のテラビット級へ拡大した。
(光送信技術)光ファイバの非線形特性による特性劣化を最小化可能な、半導体光変調器を用いる小型10Gbps RZパルス光源の新規開発を行った。
(光増幅中継技術)低雑音性に優れた980nm励起光源を採用し、信頼性向上のため励起光源の冗長構成の導入と共に陸上からの中継器の制御・監視制御技術を開発した。
(分散制御技術)波長分散の符号の異なる光ファイバを交互に配置する非線形性を考慮した新規の分散制御方式により高速光信号の伝送距離を従来の10倍以上の1万q以上に拡大可能となることを世界で初めて実証した上で、高次の波長分散も補償することによって波長多重伝送システムに最適化した広帯域分散制御技術を開発した。

3. 開発技術の特徴と効果
 本開発の成果は総システム長20万6千kmに及ぶ多くの光海底ケーブルへ適用された。その結果、日米間の回線コストは本開発以前と比較して1/10以下に低減され、世界中の人々が自由に情報をやり取りするための通信環境整備に貢献した。

図1

図2