市村産業賞

第56回 市村産業賞 功績賞 -01

EVの普及に資する軽自動車用電動パワートレインシステム

技術開発者 日産自動車株式会社 パワートレイン・EV技術開発本部
パワートレイン・EVプロジェクトマネージメント部
EV&HEVプロジェクトマネージメントグループ
パワートレイン主管 辻 俊孝
技術開発者 同社 同本部 パワートレイン・EV電動技術開発部
電動システムアーキテクトグループ 主担 新井 健嗣
技術開発者 同社 同本部
パワートレイン・EVプロジェクトマネージメント部
EV&HEVプロジェクトマネージメントグループ
課長代理 井上 恵次

開発業績の概要

1.開発の背景
 自動車の電動化が進んでおり、国内の普通車では新車のほぼ半分がハイブリッド車(HEV)となっている。電気自動車(EV)も徐々に普及しているが、国内登録車の約4割を占める軽自動車の電動化は遅れていた。本格的な量販型軽EVは、CO2排出低減の他、加速や静粛性で軽自動車の常識を覆すなど、日本のモビリティを変革するポテンシャルがあることから、軽自動車用電動パワートレインシステムの開発に取り組んだ。

2.開発技術の概要
 モータ・インバータ・減速機を水平に配置してユニット全高を抑えたため、上から吊り下げるペンデュラムマウント構造に適する形状になり、狭いスペースへの効率よい搭載が可能となった(図1)。バッテリはセルを既販車の日産リーフと共用化してコストを抑えつつ、高さ自由度に優れる“ユニバーサルスタック構造”の採用で車両のフロア下の形状に適合でき、ガソリン車の日産デイズに等しい室内空間を確保した(図2)。

3.開発技術の特徴と効果
 小型ながら195Nmの大トルクを出力するモータの採用で、加速と静粛性をガソリン車に対し飛躍的に改善した。乗用車一日あたりの平均走行距離を調査した結果、ほとんどの使用条件をカバーできる航続距離180kmをターゲットに20kWhをバッテリ容量の最適値と見極め、バッテリの小型・軽量化を図った。新開発の急速充電制御により、高速走行と充電の繰り返し時の温度制限を回避し、長距離走行も可能である。
 この新開発の電動パワートレインシステムを搭載した日産サクラは、お客様に高い評価を得て、日本国内で以前に発売された他のEVよりも急速に普及している。

図1

図2