市村学術賞

第49回 市村学術賞 貢献賞 -04

マイクロ流体デバイス技術による立体組織構築法の開発と応用展開

技術研究者 東京大学 生産技術研究所
教授 竹内 昌治
推  薦 東京大学

研究業績の概要

 マイクロ流体デバイス技術は、微小な流路や反応容器内で起きるミクロの世界特有の流体の性質を利用して、生物・化学的な分析や合成を行う技術である。たとえば、微小流路内での流れは層流となり、液体を扱いやすくなる。また、流量一定で、油の流れに少しずつ水の流れを混ぜると、均一な直径の液滴を大量に形成することができる。受賞者は、この技術を使って、細胞組織を微小なビーズ(点)やファイバー(線)、プレート(面)など規格化された材料として成形し、立体組織構築におけるビルディングブロックとして扱う技術を開発した(図1)。
 細胞は、基礎生物学や医療・創薬における研究ツールとして盛んに利用されているが、工学的に見ると、人工物を凌駕した分子認識能や物質産生能を持つ魅力的な「部品」であり、工業用製品としての利用価値も期待されている。しかし、生きた細胞は、容易に変形してしまい、大きさも揃っていないため、機械部品のように扱うのは困難であった。本技術により、細胞組織を点、線、面に規格化することで、これまで扱いにくかった細胞を部品として操作し、ブロック組み立てのように任意の立体形状を作ることができるようになってきた。
 受賞者は、本技術によって形成された立体組織を用いて、糖尿病治療のための膵島移植片(図2)や、生体に近い反応を示す薬剤試験片、分子レベルで反応する細胞を使った環境センサ、バイオハイブリッドロボットなど様々な分野への応用可能性を示した。また、現在、上記の技術に関して、ベンチャー企業を立ち上げて、医薬品、食品、化粧品分野に向けた実用化を図っている。

図1

図2