市村学術賞

第50回 市村学術賞 貢献賞 -02

サブ波長光学に基づく人工光学物質の創製と高効率光フィルタ応用

技術研究者 東北大学 大学院工学研究科
准教授 金森 義明
推  薦 東北大学

研究業績の概要

 サブ波長構造は、入射する光波長よりも小さな構造で構成される人工光学物質である。構造を制御することにより、例えば、自然界の物質には無い特異な屈折率を人工的に実現することも可能である。すなわち、サブ波長構造の形状をデザインすることで、ニーズにかなう光学応答を持つ光フィルタ・デバイスが実現できる。実用的な光フィルタ応用を考えると、光との相互作用にある程度の面積が必要となることが多いことから、受賞者はサブ波長構造を効率的に高密度配置した、入射波長よりも短い周期構造を持つサブ波長周期構造を基盤としたサブ波長光学素子を開発してきた。具体的には、有効屈折率構造を用いた反射防止構造、高輝度LED、反射防止構造付光ファイバ等を開発した。また、導波モード共鳴格子を用いた構造色利用カラーフィルタ、フォトニック結晶と微小電気機械システム(MEMS)の連携による光通信用アクティブ波長選択フィルタ、ナノインプリント技術を用いたサブ波長光学素子の安価・大量生産技術を開発した。また、メタマテリアルを用いた、量子ドットの発光波長の精密チューニング技術、超小型分光システム、高感度バイオセンサ等を開発した。サブ波長光学を基盤とした人工光学物質を用いた革新的光フィルタへの応用展開は、大きな市場に参入可能で社会・経済的効果も高く、エネルギー・地球環境や医療・福祉分野への応用展開も期待でき、今後、本技術の産業化・実用化へのより一層の展開が大いに期待できる。

図1