内視鏡は人間ドッグ等の診断ツールとして欠かせないが、複雑な構造を持つ内視鏡挿入部を完璧に消毒・滅菌する事は難しい為、付着物の残留により院内感染のひとつの要因となっていた。本技術開発は医療用内視鏡の挿入部として使い捨て利用可能な、安価なレンズ付きプラスチックイメージファイバーを開発する。
本技術開発では高価なガラス製イメージファイバーに代えて、安価な通信用プラスチック・マルチコアファイバーを使用し、樹脂で成型した非球面レンズを先端に一体形成している。使用するマルチコアファイバーはφ0.5mm と細径のため、通常の工法では保持も加工も非常に難しいが、最初に位置決めアダプターと呼ぶ構造をファイバー先端付近に樹脂にて形成し、これを基準にイメージファイバーの端面位置出しと研磨、レンズ成型加工を行う事で、高い位置精度で非球面レンズをファイバー端面に形成し、精細な画像を得る事が可能となる。また本開発ではファイバー先端に微小なレンズを形成する際に、泡の巻き込みによる歩留まり低下を防ぐ為、二相流によるシミュレーション解析と実験で型や条件等の最適化を行う。本開発で試作したイメージファイバーは、本開発期間中に複数の医療機関にて検証してもらい、ユーザー視点での課題抽出も行う。
本開発によって、医療用内視鏡向けのディスポーザブル・イメージファイバーが実現できれば、内視鏡の消毒・滅菌不良による院内感染の低減が期待される。また内視鏡を通じた感染の不安を無くす事で、検査受診率の向上も期待される。また従来の内視鏡に対して細径のイメージファイバーが安価に利用できるようになる為、従来内視鏡では観察が難しかった、気管支や歯周ポケットなど、幅広い用途での新たな応用の広がりが期待される。
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